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【弁護士田代耕平の独り言】第106回 一人親方の働き方改革?
本年もよろしくお願いいたします。本年最初のコラムはフリーランス新法についてお話ししたいと思います。
皆さんは昨年の11月から施行されたフリーランス新法をご存じでしょうか。正式名称を「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」といいます。
あるアンケート調査では、フリーランス新法を「知らない」と回答した委託者(発注者側)の割合は「建設業」(80.2%)が最も高く、フリーランス側では、「医療、福祉」(96.6%)に次いで「建設業」(90.9%)が高かったようです。
理由はよく分かりませんが、建設業界での認知度は低いようです。「フリーランス」という言葉が建設業にあまり馴染みがなく、IT業界やサービス業などの「ヨコモジ」の世界のことで建設業界には関係ないと思いがちなのかもしれません。
しかし、「一人親方」(従業員を雇っていない親方)といえば、ぐっと身近になって建設業界も無関係ではないと関心を持たれるのではないでしょうか。
「フリーランス」(新法では「特定受託事業者」といいます)とは、個人であって、従業員(週労働20時間以上かつ31日以上の雇用が見込まれる者)を使用しないもの、または法人であって、代表者以外に他の役員がなく、従業員を使用しないものをいいます。
従って、職人を複数人雇用している「親方」はフリーランスに含まれませんが、学生のアルバイトを時々使っているような「親方」はフリーランスになります。また、会社で受注していても役員が一人だけの場合には「フリーランス」に該当することもあります。このように新法の「フリーランス」は世間一般の『フリーランス』のイメージとは異なるものです。
では、フリーランス新法はどのような内容なのでしょうか。今まで、一人親方は、自由度が高い半面、契約の交渉力が弱く、また、労働者ではないため残業代がなく元請けの都合で簡単に解約されてしまうなど(法的に)弱い立場にありました。
そこで、新法では、「取引の適正化」と「就業環境の整備」を行い、発注者に一定の規制を行って一人親方を保護することにしたのです。この規制に違反した発注者には、行政からの指導・勧告と最大50万円の罰金が用意されていますが、違反事実を公表されることの方がビジネス的には重大な意味を持つかもしれません。
こうなってくると建設業界も無関心ではいられないはずです。規制内容は多岐にわたりますが、一人親方との契約は、契約条件(給付の内容、報酬の額、支払期日等)を書面や電子メール等(電磁的記録)で明示しなくてはなりません。携帯電話一本で発注はできません(建設業法と同様の規制なのですが、一人親方への電話での簡便な受発注は横行していました)。また、支払いサイトも規制があり、特に再委託する場合には遅くとも発注元からの支払いを受ける期日から30日以内には報酬を支払わなくてはなりません。
他に、契約の中途解約は解雇予告のように30日前までに予告しなければならないとか、ハラスメント対応措置を取らなくてはならないなど、労働者類似の扱いを求める規制もあります。
なお、このハラスメント規制は、親方から一人親方に発注する場合にも適用されますので、今までのような職人気質のままではパワハラと言われてしまう可能性があります。このように、建設業者もフリーランス新法についてしっかりと把握する必要がありそうです。
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