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【おとなの養生訓 當瀬規嗣】第289回 「酔い覚まし」アルコール分解は長期戦

お酒を飲み終わった後、しばらくは酔った状態が続きます。結構な時間がたってから、ようやく酔いが覚めてきます。この時に、体の中ではお酒に含まれているエチルアルコールとアセトアルデヒドの分解が肝臓で進行しています。酔いが覚めるのは、肝臓での分解反応が起こるためです。

体に吸収されたエチルアルコールは、血液に入り、脳を含めた全身を巡ることで、酔うことになります。血液中のアルコールの一部はおしっこに入って出ていきますが、その量は限られています。むしろ、脳や脂肪組織などに入り込む量の方が多いので、1、2回トイレに行ったぐらいでは酔いは覚めません。エチルアルコールが肝臓で分解されなければ、酔いは覚めないのです。

この分解作用は二段階になっていて、まずエチルアルコールをアセトアルデヒドと水に分解します。アセトアルデヒドはお酒にも少量含まれていますが、脳に影響する物質で、悪酔いの時の頭の痛さや気持ち悪さを引き起こします。

そこで、再び肝臓でアセトアルデヒドを酢酸と水に分解します。酢酸はつまりお酢のことで、脳に何ら悪影響はなく、おしっこに入ってどんどん出ていきます。こうしてようやく酔いが覚めたことになるのです。

肝臓のアルコール分解は、かなりの時間を要します。350ミリリットルの缶ビールで完全分解に2時間を要します。2缶だと倍に延びて4時間以上です。日本酒1合だとビールで500ミリリットルに相当するので3時間程度、2合では6時間以上です。そうすると、はしご酒の場合は、簡単に8時間から10時間以上かかることになるのです。

酔いを早く覚まそうとして水をたくさん飲む人がいますが、前に述べたように、おしっこに含まれるアルコールの量はわずかなので、酔いが早く覚めることはありません。また、お風呂につかると早く覚めると誤解している人もいます。しかし、酔った状態で入浴すると、アルコールで開き気味になっている血管を入浴でさらに開くことになり、血圧が急激に下がって気を失う恐れがあります。でも酔いは覚めません。

加えて、睡眠は肝臓の働きを抑え、酔い覚めを遅くする効果があります。実は、それなりに飲んだ翌朝は、まだ飲み終わって7、8時間なので、アルコールが体に残っています。それで車を運転すると、飲酒運転の違法行為になるので、お気を付けください。

當瀬規嗣(とうせ・のりつぐ)
札幌医大名誉教授、北海道文教大人間科学部健康栄養学科教授。生理学を研究する傍ら、テレビ・ラジオなどのメディアにも出演している。北海道建設新聞掲載のコラム「おとなの養生訓」では、現代のビジネスマンに欠かせない「健康」に関する情報をわかりやすく解説している。


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