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【熊本・菊陽町】半導体の町は今/TSMC熊本工場レポート

半導体の受託生産で世界最大手の台湾積体電路製造(TSMC、台湾)が日本初となる製造工場を熊本県菊陽町に建設中だ。人口4万人余りの町は、かつてない活況を呈しているが、同時にさまざまな課題が浮き彫りになりつつある。ラピダス(東京)が次世代半導体工場を建設する北海道千歳市も同じことが起こり得るのか。菊陽町の現在をレポートする。(織本真、高田睦)

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工場進出に合わせ、町の中に新たな町

菊陽町は熊本市の北東に位置する。人口が多い町の西側から熊本市の中心部までは車やJRで約30~40分で、ベッドタウンとして発展してきた。

熊本市から国道57号菊陽バイパスを東に進むと、農地が広がってくる。そこから北に転じて小高い丘の上にある工業団地「セミコンテクノパーク」に近づくと、いくつものクレーンが立ち並んだ巨大な建物が姿を現わす。

TSMCがソニーグループ、デンソーとともに、2023年内の完成を目指す第1工場だ。外観はほぼ出来上がっているように見えるが、最大5000人が3交代、24時間体制で建設作業を進めている。現場付近では、作業服に身を包んだ年齢も性別も違う人たちが足しげく行き交っていた。

工場建設地は24時間体制で多くの作業員が行き交う

工場近くの国道57号や県道沿いには、作業員らの娯楽需要を見込んでか大型パチンコ店やカラオケ店などが真新しい店舗を構える。まるで町の中に新たな町が現れた印象だ。

「新工場に勤める1700人程度が住める賃貸住宅を確保できないか」。工場着工に前後して、菊陽町では複数の不動産業者がTSMC側からこのような依頼を受けたという。すぐに熾烈(しれつ)な土地争奪戦が起こった。

工業団地に一番近いJR原水駅の駅前通の空き地や工場跡地などが次々と買われ、賃貸マンションの建築は急ピッチだ。古くからの住宅や商店の隙間を縫うようにマンションがそびえ立っている。

TSMCの最寄り駅周辺には賃貸マンションが乱立する

2022年の地価調査で菊陽町の工業地は全国最高の上昇率を記録した。しかし、土地の8割は開発を抑制する市街化調整区域に指定され、開発の余地は小さい。

「土地の争奪はピークを越えた。もう使える土地が残っていない」と不動産会社の担当者。しかし、台湾メディアの報道により、争奪戦は農地を対象とした新たなステージに入った。

第2工場建設と思惑買いされる農地

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