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【アートランダム 柴橋伴夫】/第51回 画家モネと睡蓮

「モネ 睡蓮のとき」が、2025年2月11日(火・祝)まで東京・国立西洋美術館で開催されています。今回はこの展覧会のことを紹介しながら、画家クロード・モネ(1840―1926)が愛した睡蓮について語っておきたい。というのもこの展覧会は、日本においては過去最大の規模となっているからです。そしてなにより、日本でも大人気の印象派を代表するモネの〈睡蓮〉が一堂に会しているからです。その数、64点という。パリのマルモッタン・モネ美術館が所蔵する作品がおよそ50点。さらに国立西洋美術館をはじめ日本各地に所蔵されている作品が集められました。

よく知られているように、50歳になったモネは、ノルマンディーの小村ジヴェルニーに土地と家を買い取り、これを終の棲家としました。そこに睡蓮の池のある「水の庭」を造成します。その池には、柳の木も植え、さらに日本の太鼓橋も造りました。

このジヴェルニーで制作した大作が展示されているのが、パリにあるオランジュリー美術館です。私は、この美術館を2度ほど訪れております。この時の感動をここで語っておきたいとおもいます。大作のサイズは、高さが2メートル、横幅の合計が、楕円形の二室あわせると90メートルになります。つまり睡蓮の池の水面を描いた巨大なカンヴァスによって、2つの部屋の壁面を覆うという「大装飾画」の構想を抱いたわけです。第一室には、日没と緑の反映が対になり、雲と朝が対になっています。第二室は、樹々の反映と日本の柳が対となり、朝と朝が対になっています。

モネは1870年頃より、白内障にかかり視力が失われていきます。そんな画家としては最悪の状態で、10年間をかけてこの大作を制作したといいます。つまりモネの魂がこもった作品です。だからでしょうか、アンドレ・マッソンという画家は、この大作が並ぶ空間を「印象派のシスティナ礼拝堂」と呼んだほどです。そんな聖なる空間なのです。

実は、この大壁画のような大作を感知するために、部屋の中央に椅子が置かれておりました。そこに座ると不思議なことに、タイムスリップしてあたかも自分が、モネが造成したジヴェルニーの「水の庭」の中央にいるように感じました。それはとても素敵な感覚でした。「モネ 睡蓮のとき」展では、このオランジュリー美術館の展示形式を継承しているようです。時間のあるかた、モネに関心のあるかたは、ぜひ東京まで足をのばして、みてきてください。素敵な時間を過ごすことができるはずです。

柴橋伴夫(しばはし・ともお):1947年岩内町生まれ。北海道教育大札幌校卒。展覧会評を美術誌「美術ペン」や新聞などに寄せる。「ギャラリー杣人」(喜茂別町)の館長。コラム「アートランダム」では、道内ゆかりの絵画や建築、彫刻といったアート作品や展覧会などアートな話題を紹介する。


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