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【行政書士池田玲菜の見た世界】第46回/「情報の発信と収集」問い合わせは最後の手段

お客さまとお話をしていると、「役所が書いた文章はどうもわかりづらい」と言われることがよくあります。「人が読んでわからないようにしているのではないか」とまでおっしゃる方もいらっしゃいます。

その「役所が書いた文章」をお客さまと一緒に見ながら頭を悩ませた経験はないので、どのような文章がわかりづらいと評されているのかは実はよくわかりません。

行政書士は、一般的に「行政と市民の橋渡し」を業務としています。「役所が書いた文章がわかりづらい」と愚痴をこぼす余裕はありません。たくさん調べ、相談し、悩み、そして恥をかき、お客さまにご迷惑をかけながら、業務に慣れていき、その中で「役所が書いた文章」の読み方の訓練を実地で積んでいきます。

そのようにして、役所が書いた文章をわかりづらいとは思わない行政書士ができあがります。むしろ必要なことが全て記載されており、「わかりやすい」とすら思っていることもあります。

ところで、世の中はイレギュラーに満ちています。どんなに経験を積んでも、どんなに調査しても、わからないことは発生します。経験と調査で判断できない場合は、行政庁に直接問い合わせるしかありません。最後の手段の採用です。

ところが、先日、とある外郭団体の方が、「行政書士は、とにかく何でも電話で聞いてくる。ウェブサイトを調べようともしない」とぼやいていらっしゃいました。

とある許可を得るためには、その団体に加入する必要があります。しかし、そのことすら調べもせずに、許可の取得方法を教えてもらおうと許可行政庁に問い合わせる人が多いようです。外郭団体側には、団体への加入方法から許可取得までの手続きを個別に教えてあげてほしいと許可行政庁から依頼があるようです。一般の方からの問い合わせであればやむを得ないのですが、行政書士が自ら自分のために許可を得る際に問い合わせが多いとのことでした。

行政書士としては、身につまされる思いをしましたが、一方でそのような行政書士の気持ちもわかりました。

ウェブサイトの情報、特にブログの情報は古かったり、断片的な情報しか掲載されていなかったりします。地域ごとに差もあるため、他の地域の情報は参考にしかなりません。

結局は、迅速かつ適切な業務のためには、ウェブサイトを広く調査するより、相手方に問い合わせる方がよいと判断してしまうのでしょう。

その外郭団体の方のお話には苦笑いしながら業界の特徴を謝罪しつつも、わからないことについて、さして調べもせずに直接電話で問い合わせることもある普段の業務に対する考え方を反省しました。

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池田玲菜(いけだ・れいな) アンパサンド行政書士事務所代表。知的財産の管理や企業のコンプライアンスなどを得意とする。コラム「行政書士・池田玲菜の見た世界」では、経営や組織運営にまつわるさまざまなトピックについて、行政書士の視点から綴る。


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