【行政書士池田玲菜の見た世界】第48回/「仕事の辞め時」自分で「引退」模索する時代
北海道行政書士会は定期的に会報を発行しています。会報には記事の一つとして物故会員が掲載されます。毎回、物故会員がいるわけではありません。それでも、行政書士の立場のまま亡くなった方がいるのだなとお名前を見つめます。
会報には退会者も記載されます。行政書士を廃業するときは行政書士会を退会する必要があります。先日発行された会報の退会者一覧に、かなりご高齢な先生のお名前を拝見いたしました。
定年が60歳だったのも今は昔のことです。今から12年前に、企業は、65歳まで雇用を確保することが義務付けられました。3年前には、70歳まで就業機会を確保することが企業の努力義務として定められました。
厚生労働省の発表によると、昨年6月時点で、4割強の企業において、70歳以上まで働ける制度が制定されているようです。
少子高齢化が進み、人口が減少する中で、日本社会の活力を維持するために、高齢者が活躍できる環境を整備することを、国は目的としています。生涯現役で働く制度、環境は整ってきています。
それでは、あなたは何歳まで働きますか?何歳まで働きたいでしょうか。そして何歳まで働くことができそうでしょうか。ある高齢男性とお話をしました。当時72歳のその方は、「社会の役に立ちたい。だから働ける間は働きたい」と転職活動を行っていました。無事に体力に無理のなさそうな短時間勤務の職場に転職できましたが、1年半ほどでやはり体力が持たないとお辞めになり、働くことを諦めていらっしゃいました。
働きたい気持ちとご本人の体力が見合わない例は他にもありました。会社側が環境整備を行っても、ご本人に訪れる体力の衰えとは、とてもあらがえるものではないもののようです。
体調が悪く病院に行ってみると、そのまま入院となり、ついに退院することなく亡くなってしまった知人の税理士もいます。業務の引き継ぎは十分に行えず、事務所内は大いに混乱していました。
生涯現役で働きたいと思っていたとしても、体力面で困難であったり、たとえ体力の衰えを補うことができる環境があったとしても、周囲に一切の迷惑をかけずに現役のまま息を引き取るためにはかなり十分な準備が必要のようです。
私自身は、65歳をめどに一定の貯蓄を実現し、その後は一切の仕事を辞めて、暖かい地方に引っ越したいと、働くことの終わりを夢見ていますが、実際にその年齢が近づくと仕事を継続する方法を模索してしまいそうです。
定年がなくなりつつある現代とは、仕事の辞め時を自分で模索する時代のようです。
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