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【事業承継を考える】第47回「その保険金、今受け取って大丈夫?」相続対策になるか確認を

一般社団法人事業承継協会(東京)の認定資格である事業承継士が、経営者にとって関心が高い事業承継について現状や課題などを解説します。第47回は吉田剛さんです。

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近年、相続や事業承継対策に使える生命保険商品が数多くラインアップされています。

相続対策に利用する商品は、基本的に「終身保険」と呼ばれ、保障が一生涯有効です。しかしながら、せっかく相続対策として加入していたはずの保険が、全く無意味なものとなる事例を紹介します。

先ずは相続や事業承継対策で加入している生命保険の保険証券を確認下さい!「保険金が支払われる事由」として「死亡」以外に「高度障害保険金」(両目失明や脳梗塞で両足が全く動かなくなった場合など、条件を満たすと死亡保険金と同額を受け取れるという約束)と記載がありませんか?

基本的に生命保険は、例えば3億円の保険金であれば当然3億円が支払われ、しかも個人で受け取る場合は全額非課税です!

しかし相続対策を目的として生命保険契約の締結をしている場合、高度障害保険金を生前に保険請求するのが適切か考えてみましょう。高度障害保険金は保険金支払と同時に生命保険契約が消滅します。死亡保険との二重取りは出来ません。また保険会社によっては、要介護4以上と診断された場合や、リビングニーズ特約(余命6カ月以内と診断された場合にお支払いする)などの条件設定があり生前に死亡保険金を受け取れる商品もあります。

通常、相続の場合には死亡保険金の非課税枠(法定相続人の数×500万円)を利用し相続税を圧縮する事ができます。ところが生前に保険金が入金された場合、その時点で生命保険契約が消滅し、相続税非課税枠を活用できなくなります。

先の例のように3億円の生命保険契約に加入していたとして、もし高度障害保険金に該当してしまうと生前に受け取った3億円は現金資産になります。一般的な相続税の計算式に当てはめると4人家族(ご主人、奥様、子供二人)の場合で、保険金の入金後にご主人が死亡した場合は預貯金3億円に対して相続税は2860万円です。一方、死亡保険金として3億円を受け取っていた場合は2598万円で263万円も納税額が下がります。

無論、ご主人の病状が重篤な状態になり生活費が不足する、会社の売上・利益が減少するなど会社や個人を守らなければならない状況であれば躊躇すること無く保険金請求を行って下さい。しかしながら(比較的経済的に余裕があるのであれば)請求しない方がトータルの資産を多く残せる可能性もあります。これをきっかけに保険証券を開いて保障内容を確認してみてはいかがでしょうか?

相続対策用で加入した保険の支払事由は、担当者・ファイナンシャルプランナー等にご相談下さい。

吉田剛:一般社団法人事業承継協会北海道支部事業承継士、パワーリンク課長


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