本間純子 いつもの暮らし便 第51回/若松の松ぼっくり
12月は忙しい。なんとなくセカセカしたイメージがあります。子どもの頃は、クリスマスやお正月が待ち遠しく「早く来い来い」の気分でしたが、いつの間にか「ゆっくり来て」と思うようになりました。セカセカの理由は、大晦日までに終わらせたい決まりごとがあるからで、「1月4日でもOK」「1月10日で大丈夫!」だったら、12月はもう少し穏やかに過ごせると思うのです。でも、元日に歳神様をお迎えするための、料理、大掃除、御飾りの準備があります。日延べをするわけにはいきません。
正月飾りは、28日までに用意し、29日を避けて(9が苦に繋がるため)30日までに飾る(31日は一夜飾りになるため)が我が家のルールです。ここ何年も手抜き大掃除が続いているので、歳神様は寄りたくないかもしれませんが…。それでも、玄関の正月飾りはお迎えの目印なので、毎年、自作します。若松に半紙を巻き水引を掛けるだけのシンプルなものです。若松は先端から30センチくらいのところに、3―4本の枝が出ています。数年前、その枝の付け根に小さな松ぼっくりが二つ付いていました。毎年買っていますが、松ぼっくり付きは初めてです。付いたままでは、扱いにくかったので、外してストーブの炉台に乗せておきました。しばらくして見ると、松ぼっくりが開いて種が数個、出ています。振ってみるとパラパラと30個ほどの種が落ちました。土に埋めたら芽が出るのか、松の双葉はどんな形なのか、気になります。
花や野菜の種は、芽が出た後、2枚の小さな葉っぱが開き、そこから本葉が伸びます。松も双葉が出るのでしょうか? 丸い双葉? 細い双葉? ワクワクが止まらず、年末の大忙しの最中、ネット検索を試みます。すると、今は「双葉」「本葉」とは言わず「子葉」「葉」と言うそうです。(昨今は、子どもの頃の学習内容の上書きが多い。)そして、子葉の画像が面白い。泡立て器のような姿をしているらしい。これは実物を見たい!早速、カット綿に水を含ませ、種を置いてみます。7日ほどで緑色の芽が見え始め、20日後には泡立て器状態に!。種の殻を全力で押し上げているような姿が、なんとも可愛らしい。森の中の巨大な松にもこんな可憐な頃があったのですね。その後、小さな若松たちはどんどん大きくなって、水栽培は限界となり、植木鉢に移しました。しかし…、夏の水やりを失敗してしまい、大きく育てることはできませんでした。
若松は花材名で、本名は黒松。北海道では自生していないとのこと。能舞台の背景の松は黒松がモデルで、北海道のエゾマツやトドマツとは樹形が違います。子どもの頃のクリスマスツリーはトドマツでした。このマツが、いつ能舞台の松の形に変身するのだろうと、不思議に思っていましたが、その答えは、小さな松ぼっくりが扉を開いてくれました。しばらく松の沼にどっぷりでした。私、ハマりやすいタイプのようです。
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