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記録的大雪の対応に追われる建設業者/混乱続く帯広、少雪地域で警戒強まる

北海道東部の十勝地方を襲った記録的大雪による混乱は5日も続いた。除雪業者は休まず作業に当たり、建設現場は除排雪による復旧や工程調整に追われている。北海道南部では強風で建物被害が起きたが、暴風雪による通行止めで行政が現地確認できない状況が発生した。比較的降雪量が少ない十勝での大雪に、同じく少雪である道南で太平洋側の除雪業者は警戒を強めている。(画像は急ピッチで除雪が進む帯広市内、2月5日午前10時)


除雪が追い付かない帯広

帯広市内では建設会社など47社が255台の除雪車をフル稼働して除雪を進めている。しかし記録的な大雪に作業は追い付かず、通勤時間帯の幹線道路や病院付近の道路は長い車列ができた。

通勤経路や病院への道が渋滞する帯広市内(2月5日午前10時)

市道の除雪は2月4日午前0時から夕方まで稼働。その後、午後7時に作業を再開したが、渋滞で作業員の帰宅に時間がかかり、十分な休みが取れない中での作業を強いられた。

帯広労働基準監督署には、除雪による転倒事故の報告が集まっている。田中達徳安全衛生課長は「作業中は雪や重機の死角が多く、誘導員がひかれる危険性が高い。氷による転倒にも注意が必要」と呼び掛ける。

湿った深い雪が残る帯広市東部の住宅街(2月5日午前10時)

現場は工程調整と復旧

建設業者は対応に追われた。宮坂建設工業(帯広)が十勝管内で稼働している現場は、5日夕方まで除雪中心の作業となった。影響について伊藤幸輔土木部長は「4、5日の資材搬入は延期したが、6日から入ってくる。5日までに工程を見直し、関連業者と日程調整する」と話す。

一方、経験のない大雪から「除雪業者が懸命に作業しているが、見通しが悪く、安全対策が必要。山間部の現場は雪崩、河川は水位上昇に警戒が必要」とみる。

萩原建設工業(帯広)は、早期に現場内の除排雪を終えるよう作業を進めているが、時間を要している。本社駐車場は雪で埋まり、5日には一部除雪を終えたものの、自宅待機を迫られている社員が多いという。

花染良慈執行役員は「今回の雪は想定外。記録を更新するほどの少雪と大雪の連続は極端過ぎる」と戸惑う。

帯広市街地で進む飲食店舗新築の現場では、基礎に1メートル近くの雪が積もったため、作業員総出で雪かきに励んだ。工期への影響を聞くと「何とかするしかない」と言葉少なだった。

厚く積もった雪を協力して下ろす帯広市繁華街「北の屋台」

釧路市は雪が強まった4日、公設地方卸売市場冷蔵倉庫新設を施工する葵建設・向陽建設共同体、大楽毛津波避難複合施設新設の宮脇土建・タカオ工業・村井建設・日向建設共同体ともに、現場所長の判断で4日午前に作業を切り上げた。

道南は強風、現地行けず

日本海側で雪と風が強まった渡島・檜山管内は、4日から国道や道道の通行止めが続く。国道277号熊石鮎川町―熊石大谷町間の14.3キロ区間では、維持除雪を担う東陽建設(八雲)が天候回復後の除雪作業に向けて準備を整えている。

雪が強まる市電函館駅前電停(2月5日午後3時)

八雲町では強風により住宅2棟の屋根剥落と外壁崩落が発生。人的被害はなかったが、町の担当者は「通行止めで役場から現場の熊石地区に行くことができない。対策は天候が落ち着き次第になる」と歯がゆさを説く。

後志管内の余市町では、5日午後3時の12時間降雪量が24センチを記録。国道の除雪を担う中村建設(余市)は、この日に3回出動し、6日朝まで天候が荒れる予報を受けて、泊まり体制の作業を検討している。

三陽建設工業(共和)によると、岩内町と共和町方面は視界不良が著しく、低速の一般車両に注意しながら除雪をしている。担当者は不要不急の外出を避けるよう求める一方、「最近はバックカントリースキーをする外国人旅行者が除雪車の旋回場に車を止めることがある。作業の大きなロスにつながる」と嘆いた。

少雪地域で強まる警戒感

雪が少ない十勝地方を襲った大雪について、同じ少雪地域の維持除雪業者は重く受け止めている。

国道236号野塚トンネル―浦河町西幌別交差点などを請け負う手塚組(浦河)の及川創工事係長は「日高管内の除雪体制は雪の降る地域に比べて差が出る。今回の帯広みたいに降ったら追い付かない」とみる。

国道37号などを担当する豊浦建設工業(豊浦)の入船克敏事務所長は十勝の様子を見て「学校だけでなく企業も休みにしないと2次被害が広がる危険性がある」と実感。「人員や資機材は万全だが、想定外の降り方を頭に入れる必要がある」とし、異常気象への再教育に取り組む考えだ。


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