見出し画像

【事業承継を考える】第44回「事業承継・引継ぎ補助金の活用について」生産性向上に経営革新枠

一般社団法人事業承継協会(東京)の認定資格である事業承継士が、経営者にとって関心が高い事業承継について現状や課題などを解説します。第44回は中山裕司さんです。

◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇

事業承継で活用可能な国の補助金制度の一つに「事業承継・引継ぎ補助金」がある。本補助金は、中小企業者等が(事業再編・統合などを含め)事業承継をきっかけとして行う新たな取り組みに対して、その経費の一部を補助する制度である。本補助金にはさまざまな枠があり、その中から今回は「経営革新枠」について紹介する。

「経営革新枠」とは、対象者として事業承継やM&Aを契機として経営や事業を引き継いだ(または引き継ぐ予定である)中小企業者が、引き継いだ経営資源を活用して経営革新等を行う場合に対象となる補助金で、生産性の向上を目的とした制度である。

主な要件として、①一定期間内に事業承継やM&Aを通じて経営資源を引き継ぎ(予定を含む)、その引き継いだ経営資源を活用した取り組みであること②事業承継後に「経営革新」に取り組み、かつその取り組みが「デジタル化」「グリーン化」「事業再構築」のいずれかに資するものであること③生産性向上要件を達成する計画を立案すること等―が挙げられる。そして「経営革新」とは、新事業活動として、例えば新商品の開発または生産、新役務の開発または提供などの取り組みを通じて経営の相当程度の向上を図ることである。「生産性向上要件」とは、「付加価値額」等の伸び率が昨対で年平均3%以上向上することである。「付加価値額」とは、営業利益、人件費、減価償却費を足し合わせたもののことである。

補助率は、通常2分の1以内で、補助上限額は600万円である。再生事業者等や所定の賃上げの実施等の取り組みにより、さらに条件の引き上げが実施される。

なお、現時点では第10次公募まで完了しており、今後の実施時期はまだ未公開である。しかし注意点として、第9次公募時には申請受付期間が1カ月間と準備期間が短い状況であったことに加え、策定する計画書は認定経営革新等支援機関の事前確認が必要となるため、申請を考えているのであれば公募を待たずに事前準備を進めておくことが必要であると考える。さらに補助金の内容は公募ごとに細かな仕様変更される場合が多く、都度最新の情報を取得することも重要である。

そもそも実施前の申請が前提条件となるため、その計画(構想)段階から専門家に相談することをお勧めする。

中山裕司:一般社団法人事業承継協会北海道支部事業承継士、中山戦略労務事務所


©2024 The Hokkaido Construction News Co.,Ltd.