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【アートランダム 柴橋伴夫】/第50回 北の聲アート賞

私は、道内文化の活性化を企図し、仲間達と2010年より「サッポロ・アートラボ」(通称SALA、サラ)を立ち上げました。「文化のアゴラ(広場)」を築き、「文化を読み、人と出会い、現代(いま)を知る」を基本理念にして活動しております。本年11月には121回目のレクチャーを行うことができました。

加えて12年より、全道各地で芸術文化の種を蒔いているアーティスト、団体(組織)を支援することを目指して、ジャンルを横断する「北の聲アート賞」を贈呈しております。さまざまな分野で優れた創造的な文化・地域活動をしている「民(たみ)の聲」を象徴し、それを多くの道民に広めていくことを願った名称です。芸術文化を愛し、育てていきたいと願う民間企業、団体(組織)、個人の賛助・支援により運営しております。

現在、選考委員を委嘱し、美術、文学、演劇、音楽、建築、書道の6部門で表彰をしております。2024年は第10回目を記念する表彰となりました。

詩人・哲学者の花崎皋平(小樽市在住・はなざきこうへい)に最高賞(きのとや賞)を豊平館で贈呈しました。花崎さんは、現在93歳ですが、なにより哲学を実践と結合させてきた市井の哲学者です。これまでベトナム反戦運動、成田空港や伊達火発、泊原発などの地域住民運動、アイヌ民族の復権運動への支援連帯活動、ピープルズ・プラン21世紀国際民衆行事で世界先住民族会議の運営事務局に参加しました。また札幌自由学校「遊」を開設し、市民と共に学びを続けております。

花崎さんは、こんな言葉を残しています。「私は対自然関係の人間中心主義を乗り越えて、生命=生態系の持続を自己の実存的自覚に位置付けるべきことを説いた」と。受賞を機にこれからも〈共生〉の思想を軸にして、真の人間的連帯のありかたを模索していきたいと力強く語ってくれました。

また詩を書き続け、どんなに混迷する時代であっても、澄んだ眼と批評精神を忘れずに、自らの「生きる場」を築きながら社会変革の可能性を問い続けていくという。花崎さんの1つ1つの言葉は、私達がどういきていくべきか、確かな指針を与えてくれております。

北の聲アート賞も来年は11回となります。多くの方々のご支援を頂戴しながら、この活動を続けていきたいと決意しております。

柴橋伴夫(しばはし・ともお):1947年岩内町生まれ。北海道教育大札幌校卒。展覧会評を美術誌「美術ペン」や新聞などに寄せる。「ギャラリー杣人」(喜茂別町)の館長。コラム「アートランダム」では、道内ゆかりの絵画や建築、彫刻といったアート作品や展覧会などアートな話題を紹介する。


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