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【事業承継を考える】第45回「役員退職慰労金の活用について」長期的視野で制度構築を

一般社団法人事業承継協会(東京)の認定資格である事業承継士が、経営者にとって関心が高い事業承継について現状や課題などを解説します。第43回は木下恵太さんです。

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事業承継において「役員退職慰労金」の活用は、さまざまなメリットを享受できる可能性を含んでいる。

一般的なケースとはなるが「役員退職慰労金」は、会社が存続する中で、多額の費用計上を行うことができる滅多にないタイミングとなる。(この金額については、数千万円から数億円というレベルまでさまざまだが)基本的には、会社の利益と純資産を引き下げることで、会社の株価を引き下げ「株価が高すぎて後継者に移動ができない」といった問題を解消し、スムーズな事業承継へつなげてゆくための効果的な手段の一つだ。

他にも、毎月の役員報酬と年金額を一定の金額以下にすることで老齢厚生年金の支給停止を解除できるケース、金融機関から借り入れをして「役員退職慰労金」を支給した場合に税務上の繰越欠損金により本来の納税すべき資金を借入金返済へ充てることができるケースなどがある。

一般的な役員退職慰労金は「退職時の最終報酬月額」×「勤続年数」×「功績倍率」によって計算される。

例えば単純計算で「退職時の最終報酬月額100万円」「勤続年数20年」「功績倍率3倍」ならば、役員退職慰労金は6000万となる。(*退職金の算出は、税理士などときちんとした打ち合せが必要)

ところで、その役員退職慰労金を用意するために必要な「退職金制度」としては、民間の生命保険、内部積み立て、確定拠出年金及び確定給付年金など、いくつか存在するが、まずはご自身のおおまかな役員退職慰労の金額をイメージした上で選択するのが良いのではないか。

一つ確実に言えるのは、どの制度を利用するにせよ「退職金制度」の構築は早ければ早い方が良いだろう。

仮に、毎月の掛金を費用として計上(節税)するので有れば、基本的には、金融機関や保険会社など外部資金の積み立てが必要となり、最低でも5年以上は継続しないとある程度の金額を準備できないため早期の導入が望ましいと言えるし、一方で、その場合、会社がもし経営に窮しても、自由に、その積み立てた資金を持ち出すなどの流用が難しいといったリスクが発生する可能性が高い。

それゆえ事前に前述のようなメリット・デメリットを把握した上で、中長期的な視野のもと、「退職金制度」を構築することが大事だ。〝一朝一夕〟とはならないものだろう。

とはいえ、「役員退職慰労金」は、事業承継において、最も重要な「退任した経営者の幸せを実現する」効果的な打ち手となることを考えると、検討する価値は十二分にあるだろう。

木下恵太:一般社団法人事業承継協会北海道支部事業承継士、木下社会保険労務士事務所


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