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【新年特集2025】宿泊施設やオフィスに変身!/増える遊休公共施設を活用

人口減少が進む中、地方自治体で活用されていない遊休公共施設が増加している。活用策が見つからない場合、維持管理費がかさみ続け、多くの自治体にとって悩みの種だ。北海道内の活用事例とともに、再生に至るまでの経緯、民間事業者の狙いを紹介する。


栗山町 町民が木造校舎を再生

青少年向け体験型宿泊施設に

栗山町の青少年向け体験型宿泊施設「雨煙別小学校コカコーラ環境ハウス」は、1998年に閉校した旧雨煙別小学校を活用した。36(昭和11)年建設の木造校舎は歴史的価値が高く、延べ1500人の町民ボランティアが、コカコーラ教育環境財団の支援を受け、一年をかけて生まれ変わらせた。

地域の手で再生した旧雨煙別小

内部は研修室、食堂、宿泊室、浴室などで構成。計80人が滞在でき、宿泊研修やスポーツ合宿でも利用される。里山ネイチャーハイク、栽培・収穫体験、ボート遊びなど70種類以上の体験学習を用意し、さまざまな学びの場を提供する。

町民の「自然体験が少ない」「仲間と交流する機会が少ない」という声がプロジェクトの始まり。現在は年間利用者7000人を超える。廃校舎活用の成功事例として多くの自治体から注目されている。

平取町 閉校校舎を工事作業員宿舎に

2012年に閉校した平取町の旧貫気別中学校は、2015年から21年にかけて室蘭開発建設部が整備していた平取ダム堤体建設工事に携わる作業員の宿舎に使われていた。校舎内部は個室のほか、食堂や大浴場を備え、常時90人の利用者がいたという。

市街地から遠いことが長所に

旧貫気別中の活用は、平取町と工事関係者の協議で実現。貫気別地区は人口約500人の集落で、工事関係者を受け入れられる宿泊施設がなく、現場と市街地が離れていることから実現した。

作業員が旧貫気別中から現場に通うようになると、隣接する貫気別小の学校行事をはじめ、地域の祭りなどにも積極的に参加するなど交流が生まれた。地域住民の一人は「今も人が減る一方だが、あの時の元気だったころの地域に戻ったようだった」と振り返る。

広尾町 旧保育所をハンター教習所に再生

2014年に閉所した広尾町の旧野塚保育所は、有害鳥獣捕獲事業を手掛けるジュラテクノロジー(大樹)が運営する「森のハンター教習所」として利活用されている。エゾシカやヒグマによる野生鳥獣被害が増える中、次世代のハンター育成に尽力している。

情報システム業のキャリオ技研(名古屋)が大樹、広尾、幕別の3町と連携協定を締結したことに伴い設立した。ドローンによるシカ駆除の実証実験などを進めていた。

有害鳥獣捕獲ハンター育成拠点

新たにハンター育成事業を立ち上げる拠点施設を探していたところ、広尾町が活用を提案。敷地面積が5720平方メートルと広く、さまざまなカリキュラムに対応できることから無償貸与を受けた。

わなの設置実習、食肉への加工とジビエ肉の流通法、ドローン体験など捕獲に関する技術・安全教育だけでなく、捕獲後の有効活用も踏まえた次世代ハンターの育成を目指している。

音更町 公民館がサテライトオフィスに活用

社員と住民の交流活性化

コロナ渦でサテライトオフィスが注目されたが、音更町では1990年代に遊休施設だった公民館を設計事務所に有償貸与。サテライトオフィスの先駆け的な存在となっている。

造園設計の高野ランドスケーププランニンング(札幌)は、バブル期の1990年に東京都内から北海道へ移転した際、旧鎮練公民館を事務所として活用した。現在も十勝事務所として4人が詰める。

高野ランドスケープランニンングの十勝事務所

近隣住民が野菜を持ってきたり、事務所で歓談したりと深い交流がある。国内外から受け入れるインターン滞在時は、近隣住民を交え事務所でパーティーを開くなど、地域活性化やコミュニティー醸成の役割も担う。

北海道 遊休施設をホームページ掲載

個人購入などニーズは多様化

北海道は企業などの遊休施設をホームページで公表している。道外では個人で購入するケースもあり、建設費が上昇する中で買い手のニーズも多種多様に広がっている。さまざまな手段で買い手にアプローチし、マッチングさせることが活用の鍵となりそうだ。


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