【東神楽】家具づくりで技能五輪国際大会に挑戦/匠工芸 渡部礼嗣さん
匠工芸(東神楽)の渡部礼嗣さん(20)が、9月10―15日にフランス・リヨンで開かれる第47回技能五輪国際大会の家具部門に出場する。第16回大会で銀メダルだった桑原義彦会長をはじめ、上司や同僚が作るチームの支援を受けて特訓に臨む。師匠の雪辱を果たせるか。狙うは金メダルのみだ。(高橋光一)
全国から世界へ、チーム一丸で挑戦
旭川工芸センターの加工室。渡部さんは真剣な面持ちで黙々と作業台に向かう。多数の工具があり、図面が貼られている。完成間近であろう木製のキャビネットは見事な出来栄えだ。カンナやノミで加工し、何度も微調整。目の届くところに置かれたスマートフォンのタイマーは残り1時間半を切っていた。
北海道立旭川高等技術専門学院に在学中の2023年、第61回技能五輪全国大会の家具部門で銅賞を受賞した。ことし4月に匠工芸に入社し、国際大会に向けてさらに腕を磨いた。
桑原会長は1967年の第16回技能五輪国際大会(スペイン・マドリード)で銀メダルを獲得した。開催国スペインの代表選手の完成を待つかのように2度にわたる時間延長があり、出来栄えに関係なく金メダルをさらわれた。21歳の若武者は唖然(あぜん)とし、悔しさを隠しきれなかった。
それから57年。国際大会に出る弟子を頼もしく思う気持ちの一方で、厳しく指導。この日、桑原会長と桑原強社長、社員が渡部さんの作業を見つめていた。チームで国際大会の課題について話し合うため、机の上には図面がずらりと並べられていた。
課題のヒントは参考図面と材料リスト
今回の課題である日本・オーストラリア・ブラジルの3種のキャビネットの図面が事前に示されていた。例年は3つのうち1つが課題となるが、今回は3種の特徴を混ぜ合わせた図面になるという。最終的な図面はなく、手掛かりは事前に送られてきた長さや厚さ、材質などが書かれた材料リストのみだ。
チームは材料リストを基に3種の特徴を考慮した想定図面を作成。渡部さんはそれを参考に練習に励む。大会当日は30%以上の設計変更が加わるため、桑原会長は「ぶっつけ本番に近い状況。できる人とできない人、技術力の差がはっきりと出る」と予想する。
8月に入り突然、大会本部から動画が送られてきた。持ち手やガード、滑り止めなどを備えた治具の作製も課題となり、完成度が点数にも考慮される。例年少しずつルール変更はあるものの、今回は特に新ルールが多いという。
競技は4日間で、昼食と休憩時間を挟んで計22時間。当日に図面が示された後、4日分の作業の見積もりがどれだけできるかが重要だ。
選手だった当時とは「やり方が全然違う」と話す桑原会長。手作業だけでなく機械工具や備え付けの工具もそれぞれ使いこなす必要があり、仕事量も増えている。備え付けの工具は事前予約が必要なため、作業手順をしっかりと考える必要がある。
求められる対応力、後悔ないよう全力
国内と海外では訓練の仕方が異なる。海外では若くから現場で技術を身に付けている選手もいるため、手ごわいライバルとなる。選手は時間との戦いだけでなく、対応力が求められる。
今回の練習はパーツが多いので、作業のボリューム感を理解することを目的とした。制限時間が終了し、完成したキャビネットの出来栄えをチームで確認。桑原会長は「本番はやったことないことが出てくると思った方がいい」と助言した。
渡部さんは「競技が終わった後に後悔しないようにしたい」と意気込みを語る。家具部門の日本代表の多数は上川管内から輩出されているが、1973年以来メダルから遠ざかっている。快挙を目指し、チーム一丸で世界に挑む。
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