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【おとなの養生訓 當瀬規嗣】第287回 「サルコペニア」要介護回避へ筋肉維持を

サルコペニアとは筋肉がやせてしまうこと、つまり筋萎縮(きんいしゅく)のことを指しています。サルコペニアは、さまざまな原因で起こることが分かっています。

まず、筋肉は使わないと、次第にやせていきます。筋肉がやせると、当然、筋力が低下します。筋力が低下すると、単純に力が出ないというだけでなく、関節の動きが悪くなるので、動作がうまくいかなくなったり、姿勢が維持できなくなったりします。病気やけがで長期に臥床(がしょう)すると起こりやすくなります。また、骨折などでギプスや装具を付けると、そこが動かせなくなるので、筋萎縮が起こります。これを廃用性筋萎縮と呼びます。

さらに、近年は老化現象としての筋萎縮が注目されています。これを加齢性筋萎縮といい、こちらのことを特にサルコペニアと呼ぶことが多いようです。研究によると、ヒトは30歳代から徐々にサルコペニアが起こり、年に筋肉重量の1%程度の割合で減少し続けることが分かりました。

高齢になると、腕や脚がやせて動作が鈍くなり、姿勢が不安定になりがちなのですが、その遠因はサルコペニアの進行によることが明らかになりました。もし、サルコペニアが進行すると、体を使いにくくなり、廃用性筋萎縮が併発することで寝たきりとなって、要介護になる危険性が高まるのです。

将来、要介護となる危険性を下げるためには、中年以降にサルコペニアの進行を極力抑えるべきと考えられます。サルコペニアの原因は、まだ研究中ではありますが、加齢にしたがって、筋肉でのタンパク質の合成能力が低下するという点が指摘されています。

ご存じのように、筋肉は運動によって鍛えることで、萎縮の反対の現象、つまり、肥大が起こります。そこで、中年以降での運動習慣の定着が必要と考えられます。筋力トレーニングほど激しいものでなくても、ジョギングやウオーキング、水泳、自転車など長続きする運動を励行することが重要と考えます。

さらに、タンパク合成能力の低下に対抗するために、より多くのタンパク質を摂取する必要があるでしょう。植物性タンパクより動物性タンパクの方が、ヒトが必要とするアミノ酸を多く含んでいます。牛肉、豚肉、鶏肉などを多く摂取することも心掛けるべきでしょう。特に60歳代以降は重要です。

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當瀬規嗣(とうせ・のりつぐ)
札幌医大名誉教授、北海道文教大人間科学部健康栄養学科教授。生理学を研究する傍ら、テレビ・ラジオなどのメディアにも出演している。北海道建設新聞掲載のコラム「おとなの養生訓」では、現代のビジネスマンに欠かせない「健康」に関する情報をわかりやすく解説している。


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