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【おとなの養生訓 當瀬規嗣】第296回 じんましん、体力低下も原因の一つに
皮膚が赤くなり、水膨れができます。その部分は猛烈にかゆくなり、かきむしってしまいます。この皮膚のできものをじんましんと呼びます。じんましんの形は小さく丸いというものではなく、境界明瞭な盛り上がりが皮膚上に広がり、局面と呼ばれるほどの広がりを示すものが出てきます。その全体の形状も不定で、さまざまな形を示します。
皮膚にかゆみのあるできものを一般の人は、じんましんと呼ぶことが多いのですが、実はじんましんは一つの病気の名前です。皮膚に小さな盛り上がりができ、それが複数並んでいて「ブツブツ」とか表現されるようなものは、じんましんではなく、他の原因で起こる丘疹(きゅうしん)と呼ばれるものです。
じんましんは、血液の上澄みである血漿(けっしょう)が血管から漏れ出て、表皮と真皮の間にたまることで起こります。血漿がたまった場所は表皮が盛り上がり、じんましんとなります。
血管から血漿が漏れ出るのは、血管周辺に存在する免疫担当細胞であるマスト細胞がヒスタミンという物質を放出し、これが血管を拡張させ、血管の壁から水が漏れ出やすくするからです。
通常、ヒスタミンは組織の損傷を修復する炎症反応に欠かせない物質なのですが、これがさまざまな原因によって、損傷とは無関係に出てしまうことがあるのです。
ヒスタミンは血管に作用するのと同時に、表皮と真皮の境目に分布するかゆみの神経を刺激するので、猛烈なかゆみが生じるのです。
マスト細胞がヒスタミンを放出する原因としてよくみられるのは、アレルギー反応です。食物アレルギーや花粉症などに併発する形でじんましんが出ることがあります。また、マグロなど魚肉にはヒスタミン自体が多く含まれていることがあり、それが直接じんましんを引き起こしたりもします。
このほかにも細菌感染やウイルス感染、薬物アレルギー、日光や寒冷、温熱が引き金になることがあります。
さらに、これらの原因だけとは限りません。肉体的疲労や精神的ストレス、肉体的ストレスなどで、体力が低下していると起こりやすいといわれます。肝臓に病気があり、肝臓の機能が低下していると起こりやすいともいわれます。じんましんがよく出る人は、病院でチェックを受けることが大事です。
當瀬規嗣(とうせ・のりつぐ)
札幌医大名誉教授、北海道文教大人間科学部健康栄養学科教授。生理学を研究する傍ら、テレビ・ラジオなどのメディアにも出演している。北海道建設新聞掲載のコラム「おとなの養生訓」では、現代のビジネスマンに欠かせない「健康」に関する情報をわかりやすく解説している。
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