【アートランダム 柴橋伴夫】/第48回 「奇想の画家」伊藤若冲と出会える
21日から10月27日まで、道立近代美術で「皇室の至宝 皇居三の丸尚蔵館展」が開かれます。皇室や幕府と関わりを持った松前の絵師・蠣崎波響をはじめ、日本画家山口蓬春、上野山清貢、片岡球子、岩橋英遠など〈北海道ゆかりの名品〉や北海道行幸啓にまつわる作品も展示されます。
「皇居三の丸尚蔵館」は、代々皇室に受け継がれてきた美術工芸品を保存・調査研究、展示しています。皇室ゆかりの美術作品を北海道でまとめて紹介する、初の本格的な展覧会となります。また円山応挙、呉春、伊藤若冲、酒井抱一、谷文晁ら著名な絵師による作品も見ることができます。一方、宮廷文化を感じさせる雅楽器や香道具なども展示されるといいます。
ただやはり大注目すべきは、「奇想の画家」伊藤若冲(いとうじゃくちゅう)の作品であろうか。「奇想の画家」の名づけ親は、辻惟雄である。ただ「奇想の画家」の実際の発見者は、日本人ではなかった。アメリカのコレクターたるジョー・プライスでした。プライスは、1953年に来日し、伊藤若冲らの作品と出会いその独創的な作品に感銘をうけます。そしてコレクションを開始します。
1960年代に入り、伊藤若冲などへの再評価が進み、その前衛的で新奇な画風が大人気となります。特に熱狂したのは、日本の若い層でした。では伊藤若冲とは、どんな方だったのでしょうか。
京都錦小路の青物問屋出身で、23歳で「桝源」の4代当主になります。しかし40歳で家業を捨て画業に専念します。
私が特に出会いを期待しているのが、国宝「動植綵絵」(どうしょくさいえ)の作品です。今回出品されるのは、「動植綵絵」の中の「紫陽花双鶏図」「群魚図」の2枚です。
これらは若冲が10年かけて制作し、相国寺に寄贈した三十幅の一部です。写実のなかに幻想性があり、とても不思議な絵です。相国寺は、明治にはいり「廃仏毀釈」により存立の危機を迎えます。相国寺は、この貴重な作品散失を恐れ、この連作を宮内庁に寄贈します。それにより現在は、「宮内庁三の丸尚蔵館」に所蔵されることになったわけです。
実は相国寺が明治維新後の激動の歴史を生きぬくことができた一因は、「動植綵絵」の力にあったともいえます。なぜなら宮内庁は、そのお礼としてなにがしかの金銭を相国寺に送りました。その金銭で相国寺は「息」を吹き返したといいます。まさに名画が伝統ある寺を救ったのです。
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