見出し画像

【透視図】「さかさまな国」へようこそ

人がなぜ旅をしたがるのかについては、古くから多くの人がさまざまな意見を述べている。旅の楽しみは百人百様のため、間違った答えというものはない。例えば評論家の森本哲郎氏はエッセーで、こんな見方を披露していた▼「旅とは、さかさまな国で自分を発見すること、後悔の向うに希望を見出すこと、そして人間の世界は、かくも広く、かくも多様で、かくも豊かなのだということを実感することだと思う」。

日本を訪れる観光客にも、そういう人は少なくないのでないか。生まれ育った国とは何もかも違う「さかさまな国」に来るのである。時には日本の文化や習慣を知らずに、日本人の神経を逆なでしてしまう観光客が出てきてもおかしくない▼その典型だろう。チリ人の女性が神社の鳥居で懸垂運動をしたり、参道の階段を逆立ちで降りたりする姿をインスタグラムに投稿し、日本人から一斉に批判を浴びた。聖域との境を示す鳥居を鉄棒替わりにして遊ぶなど非常識にもほどがある、というわけだ。

批判はその通り。女性にはもっと日本の文化を学ぶ姿勢を持ってほしかった。とはいえ責める一方というのも狭量にすぎよう。訪日観光客全てに神社の知識を持てと要求するのも無理な話である▼日本人もキリスト教やイスラム教の国へ行き、宗教的常識を知らずに無礼を働くことがよくあると聞く。あぜんとされ叱られ覚えていく経験があってもいい。女性は軽率な行為を後悔し、投稿も削除したそうだ。まともな人に違いない。これを機に世界の広さ、多様さに気づいてもらえれば幸いである。


©2024 The Hokkaido Construction News Co.,Ltd.

ここから先は

0字

透視図

¥1,000 / 月 初月無料

北海道建設新聞のコラム透視図をまとめた月額マガジンです。ご購読中に追加されたコラムを、全て読むことができます。

記事の更新情報は公式X(Twitter)アカウントでお知らせしています。