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【透視図】自民党本部と首相官邸でテロ

わけ知り顔の識者やマスメディアが逆接の接続助詞「が」を使うのを聞くと、眉をひそめたくなる人も少なくないのでないか▼ある犯罪者について論評するとき、「Aが犯した行為は断じて許されるものではないが、彼をここまで追い詰めた政府の不作為にも大きな責任がある」といった一節の真ん中に置かれる「が」がそれである。前段はいわば枕ことばで、論者が本当に訴えたかった主張は後段にある場合が多い。

おかしなことに残虐なテロであっても、政権側を攻撃したものであればこの「が」がよく登場する。安倍晋三元首相を暗殺した男を擁護する意見が典型だろう。「―が、男の生い立ちを考えれば怒りの矛先が自民党や政府に向けられたのも当然」との発言がずいぶんとあった▼そうした昨今の、テロに理解を示す特定のかいわいの歪んだ風潮が一つの呼び水になったのでないか。49歳の男が19日、東京都千代田区の自民党本部と首相官邸を相次いで襲撃した。首相官邸前で現行犯逮捕されたという。

自民党本部で火炎瓶のようなものを5本ほど投げ、器具を使って警察官に液体を噴射。そこから首相官邸に向かい、ワンボックス車で防護柵に突っ込んだ。車内にはガソリンの入ったポリタンク20個ほどが積まれていたというから、大惨事になっていた可能性もある▼ところが民主主義に敵対するこれほどのテロ事件なのに、普段やっきになって容疑者の背景や心情を伝えるマスメディアからも識者からもほとんど続報が出てこない。今回は「―が、」の先を続けられない事情でもあるのだろうか。


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