【透視図】トランプ氏が第47代米大統領に就任
破壊しているようで、実は創造を促している。そんな役割を果たす者を「トリックスター」という。神話や昔話では道化やアウトロー、いたずら者としてよく登場する▼時に現実社会にも現れるようで、ユング派臨床心理学者の河合隼雄さんがその効用についてこう語っていた。「非常に思いがけない動きをするので、そこに思いがけない結合が生じてクリエーションを促す」(『魂にメスはいらない』朝日出版社)。
社会がある価値観でがんじがらめになっているとき、それに縛られることなく自由に振る舞い、人々を古いくびきから解放する。ドナルド・トランプ氏もまさにそうしたトリックスター的側面を持つ▼自由貿易、グローバル化、移民受け入れ、世界の警察などこれまでの米国の「常識」に次々と「ノー」を突きつける。王様は裸だと叫んで権威に冷水を浴びせ、本当の愚か者を明らかにした少年のようなものだろう。現状に不満を抱く多くの有権者が熱狂的に迎え入れたのもゆえなきことではない。
日本時間の今日未明、第47代米大統領に就任した。報道によると就任前の演説でさっそく、バイデン前大統領が進めてきた温暖化ガス削減や社会の多様性重視など多くの政策の転換、関税の引き上げを実行すると気炎を上げたそうだ。日本含め世界各国は戦々恐々である▼ただ、トリックスターはその性格上、きっかけをつくる者であって創造する者ではない。河合先生も救いをもたらせないなら「完全な破壊者」だと指摘していた。さて2期目のトランプ氏はただのトリックスターか、創造者か。
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