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【透視図】現代学生百人一首

本道にもゆかりのある明治の歌人石川啄木に、思春期特有の高揚と焦燥が共に伝わってくるような一首がある。「不来方のお城の草に寝ころびて空に吸われし十五の心」。啄木はこの直前に教室を逃げ出し、お城にやって来たのだった。あふれる思いが短文に凝縮されている▼そんな心を受け継ぐ東洋大学「現代学生百人一首」第38回入選作が先週、発表された。今回は全国から5万8839首の応募があったそうだ。

ことしも入選作品100首の中から幾つか紹介したい。「『夢を持て』と言われ続けて十七年『現実見ろ』と言われる面談」(伊那西高3年城倉莉子)。大人の階段は上るほどに狭くなる。話が違うと文句を言いたくもなろう▼「コロナ禍で行き先変わった修学旅行次は物価で一泊減った」(埼玉県立坂戸西高2年三関真由)。割り切れぬ思いを抱くのも当然だ。「AIに平和の解を求めたら停戦の日は見えるだろうか」(東京学館新潟高1年本田杏)。愚かな国家指導者よりAIの方がましかも。

娘に嫌われているのではと心配な父親にはこの歌。「『おかえり』と返したことはないけれどアニメ見て待つ父の『ただいま』」(北星学園女子中2年織本夏歌)。今はそんな時期らしい。「帰り道いつもと違う道通り狐に追われ全力疾走」(旭川明成高2年齊藤美羽)。無事で良かった▼「裏垢(うらあか)と本垢(ほんあか)の違いなんだろう自分探しと友達探し」(福岡県立三池高1年久保杏菜)。アカウントの裏と本ではどちらが本当の自分か。啄木と同じ複雑な「十五の心」が胸に響く。


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