【透視図】東北電力女川原発再稼働
日本が全面開国してからそれなりの年月がたつが、長い歴史で染みついた島国気質はなかなかなくならないようだ。いい意味でお人好しな半面、他を顧みない内向き思考なところがある。他国との関係抜きに運営ができない大陸型国家とは、そこが違う▼作家坂口安吾が敗戦直後の随想に、「古い島国根性の箱庭細工みたいな日本はなくなり、世界というものの中の日本が生まれてこなければならない」と書いていた。
門戸開放の勢いがあった明治維新から80年たってのこの言である。そこから80年後の今も、日本人の根幹がさほど変わっていないとしても不思議はない。利害が強く絡む国家間の綱引きを基本とする安全保障の話題を苦手にしているのも、そのあたりに理由があろう▼とはいえ、戦争抑止を目的とする安全保障は昨今のきな臭い国際情勢もあり、だいぶ地に足の着いた議論になってきた。一方で経済や食糧、エネルギーといった重要分野の安全保障は、まだ国民に十分理解されているとは言い難い。
電力がいい例だろう。コロナ禍後の需要増大や相次ぐ戦争で世界的な燃料資源争奪戦が行われている中、日本は原子力発電を止め続け、太陽光発電のパネル設置競争に血道を上げていた。その結果が電力危機の恒例化と料金の高騰である▼東北電力女川原発(宮城)の再稼働がようやく決まった。50ヘルツ地域で震災後の第1号になる。脱炭素と安全保障で世界が原発回帰に動き出す中で日本の島国気質ばかりが目立つ。「世界というものの中の日本」は現在、いったいどこをさまよっているのか。
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