【透視図】野菜が高すぎる
物とサービスの価格は需要と供給のバランスによって決まる。そんな市場原理を極端に誇張し、笑いに変えたのが落語の「千両みかん」だった▼ざっくりとこんな噺である。大店の若旦那が重い病気にかかり、みかんが食べたいと言う。ところが季節は真夏。今と違い、当時はまず手に入らなかった。番頭が江戸中を探し回り、問屋の奥で一個だけ発見。貴重ゆえ値段は千両だという。驚きながらも番頭は買って帰る。
若旦那は喜んで七房を食べ、残りの三房を「分けて食べて」と番頭に渡す。部屋を出た番頭は「これが三百両か。一生楽に暮らせる」とそのまま逃げてしまうのである。冬ならただ同然のみかんが千両となれば、感覚がおかしくもなろう▼スーパーでキャベツ一玉に800円もの値段が付いているのを見て、その噺を思い出した。さすがに千両とまではいかないものの、いつも気軽に買えていた物が目を疑う高さになっているとびっくりする。他にもレタスや白菜といった葉物野菜の高値が目立つ。
農林水産省の食品価格動向調査で平年との差を見ると、最新(1月13日の週)がキャベツで337%、白菜で250%、レタスで174%などとなっていた。いずれも冬の健康には欠かせない鍋やサラダの主要な戦力である▼昨年の天候不順で品薄になっているのが原因という。こうなると鍋をしても、肉はさておき高級な野菜の奪い合いになる事態も生まれそうである。とんかつなどはかつを残してもキャベツの千切りは残せない気持ちになるかもしれない。若旦那も今頼むならキャベツだろう。
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