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【透視図】日本の「伝統的酒造り」がユネスコの無形文化遺産に

旅行ではその土地の酒を飲むのが楽しみ、という人も多いだろう。当方もその一人である。蔵が小さく大量には造れないため「ここでしか飲めません」、などと聞かされたらもうたまらない。思わずぐっと身を乗り出してしまう▼漫画家の赤塚不二夫さんも同じだったようで、エッセーにこう記していた。「旅と酒―ほんとうに不思議なものだ。どうして旅に出ると、うまい酒に出会うのであろう」。まさにその通り。

旅情がうまさをかさ上げしている側面は否めないものの、それだけではない。地元の米や水を使い、気候風土に合った酒造りをする技法が日本各地で長く守り伝えられてきた。詩人の田村隆一さんの言葉が簡潔にして的を射ていよう。「酒は、その土地の文化の結晶なのである」▼そんな結晶を生み出す「伝統的酒造り」が、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に登録される見通しになったという。評価機関がこのほど、日本の提案に対し、登録が妥当とする勧告をまとめたそうだ。

米や麦などの原料を蒸してこうじを作り、発酵を絶妙に管理しながら日本酒や焼酎、泡盛などを製造するのが「伝統的酒造り」。500年以上前に原型が確立し、醸された酒は儀礼や行事といった社会習慣の中で不可欠な役割を果たしてきた▼ユネスコはそうした一体の文化を高く評価したようだ。全国には日本酒の酒蔵が1400以上、焼酎の酒造場が1000ほどある。それぞれが地域色豊かな酒を造っているのだから、文化の厚みは相当なもの。さて、次の旅がますます楽しみになってきた。


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