【透視図】青鬼は悪者か?
昔話や童話では人に害なす悪者とされがちな鬼を、違う切り口で描いて読む者に深い印象を残した一作だろう。『泣いた赤鬼』(浜田広介)のことである▼人と仲良くなりたいのに怖がられて誰も寄ってきてくれないと悩む赤鬼を、友だちの青鬼が助ける話だった。作戦はこんな具合。青鬼が人里へ行って一暴れし、そこに赤鬼が出てきて青鬼をやっつけるのである。狙いはぴたりとはまり、赤鬼は人と仲良くなれた。
ありえないがこの話が実際に起きた事だと仮定すると、伝えたのが現代のマスコミでなく浜田さんでよかった。マスコミなら青鬼が暴れた部分だけを切り取り、残酷非道な青鬼と決めつけ糾弾する一方だったに違いない。または赤鬼から青鬼に裏金が渡ったのではと疑ったり▼17日投開票の兵庫県知事選で再選した斎藤元彦氏を巡るマスコミの偏りぶりを見て、そんなことを思わせられた。常軌を逸したパワハラを繰り返し、わがままで傲慢(ごうまん)。しかも行く先々で物品の「おねだり」も。
元県職員が知事批判の文書を報道機関に送り自殺して以来、マスコミは斎藤氏がそんな人物だとの印象を広めることに専心してきた。どうやら全てが事実ではなかったらしい。それが分かったのは、SNSに悪評を覆す情報が次々と出てきたからである▼もちろん氏にも反省すべき点が多々あったに違いない。ただ、丁寧な検証もなく、一方的に袋だたきにするのは度を超えていよう。再選は真実に気づいた人が多かった証拠でないか。青鬼だって経緯と背景を知ればただの悪者ではなかったのだ。
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