小樽文学館で開催の座談会で
塔は解体せず、手を加えずに見守ってほしい―北海道百年記念塔を設計した井口健氏は、3日に市立小樽文学館で開かれた座談会で、塔の在り方について自身の思いを語った。塔建設の経緯を振り返った上で、巨額を投じて解体を進めようとする道の方針に疑問を呈した。
1970年に完成した百年記念塔は近年、外壁パネルの穴開きやさび片の落下が確認されている。このため、道は2018年度に有識者らを交えた検討会議を経て解体を正式に決定。跡地には新たなモニュメントを設置予定で、5日付で解体の実施設計を公募型プロポーザルで公告した。一方、井口氏を含む建築家有志らは塔の建築物としての価値を重視し、解体方針の見直しを求めている。
井口氏はこの日、玉川薫館長らとの座談会で、塔の設計原案が変更を余儀なくされたことに無念の思いを吐露。「道の予算内に収まらず、塔周辺に予定していた先人を慰霊する石造施設の建設を断念した。建築家としては非常に不本意だった」と話した。
取り壊しの準備を進める道の姿勢に対し「このまま解体されれば、先住民への配慮を欠いたものとの印象が残ってしまう」と危惧。設計原案で提示した周辺施設の整備を望んでいるとした。また、道が解体費に約4億円を試算していることを受け「巨額の費用を投じて取り壊すのではなく、自然に朽ちていくのを静かに見守って」と訴えた。
小樽文学館では11月29日まで「竣工50年北海道百年記念塔展」を開催。設計時の塔模型や設計図、塔をモチーフにした美術・文学作品を展示している。
(北海道建設新聞2020年10月6日付1面より)
北海道建設新聞2020年10月5日付1面には、百年記念塔解体についての関連記事(解体実施設計の公募型プロポーザル公告)が掲載されています。記事は本紙のほか、有料の会員向けサービス「e-kensinプラス」の「記事検索」でもご覧いただけます。
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