概算事業費7200億円 経済効果は年間878億円
各所で検討が進む第2青函トンネルに関連し、日本プロジェクト産業協議会(JAPIC)は、津軽海峡トンネルと命名した新たなプロジェクトを構想している。昨年公表した計画によると、延長は31㌔で、工期に15カ年、概算事業費に7200億円を見込む。自動車で函館―青森間を2時間半で結び、経済効果は年間878億円を試算するなど、日本経済に大きなインパクトを与える構想だ。また、トンネルは松前半島道路と津軽半島を接続する想定のため、事業化すれば高規格幹線道路整備の進展も期待できる。

北海道側坑口を表した津軽海峡トンネルの完成予想図
青函トンネルでは新幹線と貨物列車が共用走行することから、新幹線は時速160㌔での走行にとどまり本来の高速性が発揮できていない。さらに、トラック輸送は依然として海上輸送が伴うことからコスト高となっている。
JAPICが提案した津軽海峡トンネルは、青函トンネルを新幹線専用に振り替え、片道1車線の自動車道と貨物輸送の単線鉄道を二層化したトンネルを新設するもの。
自動車道は自動運転技術が急速に進化していることを踏まえ自動運転車専用とし、未対応の車両はパレット台車の輸送で対応する考え。道路路肩は、道路構造令の特例が適用されるため両側25cm縮小でき、トンネル断面は内径15mを実現する。
最大勾配は青函トンネルを1.3ポイント上回る2.5%、海底下の最小土かぶりは70m浅い30mと設定。トンネル延長は31㌔と22・85㌔の短縮となる。
トンネルと接続するアクセス道路は、北海道側は将来建設予定の松前半島道路に直結する構想。青森側と合わせて整備費は2000億円を試算する。渡島管内では2021年度に函館・江差自動車道北斗茂辺地―木古内間が開通する予定。木古内から松前方面に延伸する松前半島道路については、まだ調査に入っておらず地元からは早期着手が望まれているが、トンネルの計画が動きだせば事態が進展する可能性がある。
工期はアクセス道路や在来線の整備と合わせて15カ年を見込む。調査設計は環境アセスメントを含め5年間を費やし、約3年後にトンネル掘削を両側から始める想定だ。月間掘削距離(月進)はそれぞれ300mと仮定し、5年ほどで中央部で貫通する見通し。
新計画により函館―青森間の所要時間は自動車で2時間半となり、フェリーに比べ半減。大型車の物流コストは46%削減される。
経済効果は年間878億円を試算。内訳を見ると、道内から移出される農畜産物の物流が約60万㌧増え340億円、観光を主体とした域内消費が北海道側で393億円、青森側で145億円としている。
JAPICは昨年12月に今後推進すべきインフラプロジェクトの一つとして、同トンネルを赤羽一嘉国土交通相に提言。11月に札幌市内で開かれたシンポジウムでは、藤本貴也JAPIC国土・未来プロジェクト研究会委員長が「青森県や北海道のためではなく日本のためのプロジェクト。これを踏まえ、あえて津軽海峡トンネルと命名した」と語っていた。
莫大な費用を投じる計画であるだけに、地元だけでなく全国でトンネルの必要性をきちんと認識し、実現に向けて一丸となることが求められる。
(北海道建設新聞2021年1月12日付1面より)
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