コラム「透視図」

衆院選の大義

2017年09月21日 09時04分

 120年前のこと。米国の新聞社「ニューヨーク・サン」に8歳の女の子から一通の手紙が届いた。友達と意見が対立したので答えを教えてほしいというのである。その質問とは「サンタクロースって本当にいるの?」

 ▼記者は紙面を割いてこう語り掛けたそうだ。「毎年多くの人々がサンタのおかげで優しい気持ちになる。それは間違いのない事実だ。だから君が考える通り目には見えないけど確かにいるんだよ」。子どもは隠れた真実を無邪気に突いてくるから面白い。あまり夢はないが、今の日本ならこんな質問が出てきたりはしないだろうか。「選挙に『大義』って本当にあるの?」。安倍首相が来月仕掛ける見通しの衆議院選挙のことである

 ▼前例に倣って筆者が答えてみたい。「いいところに目を付けたね。でもまず知ってほしいのは、本来の『大義』と、政治の世界のそれは違うということなんだ。政界では本当の目的から国民の目をそらせたいときに隠れみのとして『大義』の言葉を使うんだよ」。「安倍首相はね、野党の弱体化や準備不足、足並みの乱れを見て今なら勝てると解散に打って出るんだ。でも理由が勝てるからじゃカッコ悪いだろう。だから選挙で日本の将来は大きく開けるとの『大義』を用意しているんだよ」

 ▼まあ教育的にはよろしくない話ではある。もっとも首相に限らず、先の国会で『大義』に公正な政治の実現を掲げながら、実際にはゴシップを基に政権攻撃ばかりしていた野党も同じ穴のなんとやら。子どもに自信を持って説明できる答えは見つかりそうもない。


台風18号日本縦断

2017年09月20日 09時09分

 無知ゆえのことだが、子ども時分は台風が来ると何か普段と違うことが起きそうでわくわくしたものである。ところが年を重ねてくると感じるのは不安ばかり

 ▼近年、雨の降り方や風の吹き方が激しさを増し、通り過ぎる地域に、ことごとく深い傷跡を残していくからだろう。時間降雨量で、瞬間最大風速で、本来はめったに出ないはずの「観測史上初」の言葉が頻繁に聞かれる。あらためて考えれば異常な話である。今回、日本列島を襲った台風18号も九州、四国、本州、北海道の全てに上陸した観測史上初の台風だったという。本道到達前に温帯低気圧に変わる例も多いのだから、今回の台風がどれだけ膨大なエネルギーを持っていたか分かる。やはり地球温暖化の影響だろうか

 ▼「台風過全身打撲の如き稲」成子利美。それが心配だったに違いない。大分で田んぼの様子を見に行った男性が行方不明になっている。香川では崩れた裏山の土砂の下敷きになり女性が死亡したそうだ。悲しい被害も後を絶たない。こんな言い方が適切かどうか分からないが、雨の降り方などが激変している以上、それとうまく付き合う方法を学び直す必要があるのではないか。これほど観測史上初が頻発しては過去の知識に頼るのにも限界がある

 ▼東日本大震災を経験したアベナオミさんが著書『被災ママに学ぶちいさな防災のアイディア40』で「想像力こそ防災力」の考えを紹介していた。災害状況を自分の頭で想像することで防災力が磨かれるという。観測史上初の先にある危機を捕まえられるのなら何でも試してみたい。


名バイク生産終了

2017年09月16日 09時19分

 プラグがかぶった―。バイク乗りであれば誰しも経験があろう。キックのタイミングが合わなかったときなど、エンジン内の混合気が濃くなりエンジンがかからなくなるトラブルである

 ▼電気式スターターが付いてからはほぼなくなったが、キックの時代はバイクそれぞれに個性があって、慣れない人がキックをしても始動せず、すぐプラグをかぶらせてしまったもの。それを見て持ち主はニヤリとするのが常だった。君みたいな未熟者にこのバイクはまだ扱えないよ―というわけだ。そうして持ち主はおもむろに愛車にまたがり講釈を垂れるのである。「まずキックを軽く踏んでピストンの位置を確かめる。アクセルはこれくらい開けて。力はいらない。床を抜く感じで踏み下ろす」と

 ▼今月1日に施行された新排出ガス規制の影響で各メーカーが次々と名車の生産終了を決めていると聞き、環境より高出力重視だった古き良き昔のことを思い出した次第。元ライダーの当方も何度汗だくでキックをしたことか…。生産終了になるのはホンダ「モンキー」、ヤマハ「SR400」、カワサキ「エストレヤ250」、スズキ「スカイウェイブ250」など。バイク好きなら姿が目に浮かぶものばかりだろう

 ▼新基準では排ガスが約半分に規制されたほか、浄化装置の搭載も必須となった。こうなると飾り気のなさが魅力のモデルほど対応が難しい。バイクも電動化の研究が進んでいると聞く。将来「プラグがかぶる」は死語となり、こう言う人が増えるのだろう。「バイクのプラグをコンセントに差し忘れた」。


O157はどこから

2017年09月15日 09時10分

 類いまれな知性を持ちボクシングの腕はプロ並み、バイオリンの名手でもあるといえばもうお分かりだろう、推理作家コナン・ドイルの創作による名探偵シャーロック・ホームズである

 ▼そのホームズが『緋色の研究』で推理の極意をこう語っていた。「事件を解くにあたって大切なのは、過去にさかのぼって逆に推理しうるかどうかだ」。与えられた結果から、なぜそこに至ったかを見抜く分析力が必要というのだ。架空の人物と分かってはいても、現実に難しい事件が起きるたびホームズが今いればと考えてしまう人も少なくないだろう。埼玉、群馬両県の総菜販売店「でりしゃす」系列店の商品が原因となった腸管出血性大腸菌O157感染拡大もそんな事件の一つでないか

 ▼22人もの感染者が出て、痛ましいことに3歳の女児一人が亡くなっている。それなのに感染経路はいまだ不明のまま。食べた人はそれぞれ別の店舗で総菜を買っていたにもかかわらず、同時期に発症している。不可解というほかない。系列店では惣菜を皿に盛り、客が備え付けのトングで自由に取り分ける方式をとっていた。このため前橋市保健所は何らかの原因でトングにO157が付き、使い回しによって広がった「二次汚染」の可能性を指摘しているという

 ▼ただ、それでは複数の店でほぼ同時に感染が出たことを説明できない。どこかに見落としはないのだろうか。感染経路が特定されなければ対策も不十分なものに終わる。消費者の不安を拭い去るためにも、関係者にはホームズ並みの分析力を発揮してもらわねば。


北朝鮮への追加制裁

2017年09月14日 09時15分

 SF作家星新一のショートショートに「世界の終幕」がある。世界中のたくさんの家庭に、ある日小さな包みが配達されるところから話は始まる

 ▼入っていたのはダイヤルと押しボタンが付いた小型の機械。同封の説明書を読むと、全世界の核兵器を一挙に爆発させる装置だという。テレビをつけると、開発した科学者がこう語っていた。「ひとにぎりの人たちが握っていたその権限を、大衆の手に開放したのです」。大衆とはいかないものの、「俺にだけは押しボタンをよこせ」と要求しているのが、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長だろう。一握りの国だけが権限を持っているのはおかしいとの主張である

 ▼正論のようにも聞こえるが、実際は核の均衡を根底から覆す危険な考えというほかない。現行の核不拡散体制は理想の形ではないにせよ、長期的には核兵器廃絶を目指し、適正に維持管理できる5カ国にのみ保有を限って不慮の事態を避けようとするものである。独裁者のわがままが入り込む余地はない。国連安保理が11日、北朝鮮への追加制裁決議を採択した。石油輸出に上限を設けたほか、各種手立てで輸出収入の9割削減を見込むそうだ。6回目の核実験から時をおかず、中国とロシアを含む国際社会が足並みをそろえた意義は大きい

 ▼さて冒頭の装置の正体は、世界を終わらせようとボタンを押す危険人物を爆発させる仕掛けだった。金正恩氏が今しているのも似たようなこと。核実験のボタンを押すごとに、国も人民も著しく痛手を負っていく。行き着く先に平和な未来があるはずもない。


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