コラム「透視図」

本物にだまされた?

2020年07月10日 09時00分

 預貯金詐欺のような新手も増えているが、特殊詐欺の中ではいまだに「オレオレ詐欺」の認知件数が一番多い。子を思う親の心を巧妙に利用するからだろう。子が不祥事を起こし急にお金が必要と聞けば、何とかしたいと思うのが親心である

 ▼典型的な手口はこうだ。息子を名乗る人物から「会社の金を使い込んでしまった」「車で人をはね、示談金がいる」と電話が来る。泣きながら話しているせいか声がおかしい。交通事故の場合は途中で警官に代わり状況を説明。「逮捕して取り調べている」と不安感をあおる。さらに弁護士が登場し「示談金をすぐ用意できれば収監は免れます」とたたみかけるのだ。社会的信用の高い警官や弁護士の名をかたるところがミソである

 ▼ところがこちらは、本物の弁護士が依頼者を裏切っていたというのだから目も当てられない。過日破産した弁護士法人「東京ミネルヴァ法律事務所」が金融業者から回収した過払い金約30億円を依頼者に返さず、流用した疑いがあるそうだ。メディアで名を聞かない日はないくらい派手にCMを打ち、依頼者をかき集めていた事務所である。消費者金融などへの過払い金返還請求を業務の柱にしていた。どうやらその返還された過払い金を広告費やコンサル料に充てていたらしい

 ▼現在、第一東京弁護士会が調べているが、流用された預かり金は依頼者数千人分にも上るのだとか。30億円といえば昨年の特殊詐欺被害額316億円のほぼ1割である。いわば本物にだまされたようなもの。信じて任せていた依頼者の落胆はさぞ大きかろう。


大雨続く

2020年07月09日 09時00分

 人気絵本「ばばばあちゃん」(福音館書店)シリーズをご存じだろうか。持ち前の行動力と知恵で毎日を楽しく過ごす老婦人を描いた子どもたちの大好きなお話である。その数ある作品の一つに「あめふり」があった

 ▼こんな話である。バケツの水をぶちまけたような雨が降り続き、庭が海になってしまう。怒ったばあちゃんはストーブと暖炉にまきをどんどんくべ、最後にこしょうとトウガラシの束を放り込むのだ。それは煙に乗って空まで運ばれ、雲の上で雨を降らせていたかみなりたちに届く。皆くしゃみは出るわ目は痛いわで大騒ぎ。そんなこんなで雲はちぎれ、かみなりたちは地上の泥水に転落。空にすっきりとした青空が広がるのである

 ▼こんなばあちゃんが今いてくれたらどんなに助かることか。ここしばらく日本でも九州をはじめ広い範囲で強い雨が降り続き、深刻な被害が相次いでいる。西日本から東日本にかけて梅雨前線が停滞しているため、かみなりたちが好き放題に暴れ回っているらしい。熊本県南部に4日未明発生した線状降水帯はその後も場所を変え時を変え、連日、日本のどこかを襲っている。九州では熊本を中心に50人以上が死亡し、少なくとも13人が行方不明のままだ。きのうは長野と岐阜の両県にも大雨特別警報が出た

 ▼前線の活発化はしばらく続く。当面は日本のほぼ全域で土砂災害や河川の氾濫に厳重な警戒が必要だ。間違っても常人ならぬばばばあちゃんを見習って、逃げずに立ち向かおうなどと考えてはいけない。少しでも危険を感じたら安全な場所に避難しよう。


ギョーザ?

2020年07月08日 09時00分

 仲間うちだけで意を通じ合わせたいときに使う言葉に符丁がある。最もよく知られているのは「お勘定」を指す「おあいそ」だろう。昨今は飲食店で客が呼び掛けているのもよく耳にするが、店員に「愛想を振りまけ」と命じているようでどこか違和感を拭えない。やはり符丁は時と場所を選んで使いたい

 ▼落語にも符丁をお題にした「青菜」がある。大きな屋敷の旦那が、仕事に来ている植木屋に酒をすすめる噺だ。旦那がおひたしを出そうと奥方に申し付けると、こんな言葉が返ってくる。「鞍馬山から牛若丸がいでまして、その名を九郎判官」。聞いた旦那は「では義経に」。切らしているのを「食ろう(九郎)てしまった」「では、よし(義)ておこう」と符丁で伝え合ったわけ。客に気を遣わせない工夫である

 ▼一方で世の中には、後ろ暗い行為をごまかすための姑息(こそく)で白々しい符丁もあるようだ。東京都知事選投開票日の5日に、枝野幸男立憲民主党代表らが発信したツイートがそれである。枝野氏は自党が押す宇都宮健児候補に世間の注目が集まるよう宇都宮ギョーザを話題にし、「#宇都宮」とハッシュタグを付けて拡散。同党関係者や支援者もこれに追随して次々と「#宇都宮」情報を流した

 ▼ついには利用された「宇都宮餃子会」の公式ツイッターから、〝悲しくなった〟と苦言を呈される始末。先の落語では、符丁を使ってみたくてたまらない植木屋が家に帰ってから変にまねをして、妻と友人にすっかりあきれられる。使う時と場所を間違えた枝野氏らも植木屋と変わらない。


川辺川ダム

2020年07月07日 09時00分

 塔博士と呼ばれた建築家内藤多仲は自身が設計した東京タワーの優美さについて、後にこんなことを語っていたという。「無駄のない、安定したものを追求していった結果できたものだ。いわば数字の作った美しさ」。昨12月に見た番組『美の巨人たち』(テレビ東京)で仕入れた知識である 

 ▼空の一点に向け伸び上がる鉄骨の曲線美も、333mの高さもタワーの安定を数字で突き詰めていった末の答えだったのだ。ほとんどの建築は意匠を重視するため、数字だけで表現される例はそう多くない。一方で土木は東京タワー同様、数字が主役である。治水はその典型だろう。例えばA川で時間雨量X㍉の雨がY時間降ると水位はZm上昇。流域の洪水を未然に防ぐには高さHmの堤防がL㌔必要といった具合

 ▼通常の治水施設で調整できない場合はダムも検討される。4日の豪雨で大きな被害が出た熊本県南部球磨川流域の惨状を見て、現地で長年懸案となっているダムの件を思い出さないわけにはいかなかった。川辺川ダムである。今回も広範囲に浸水した人吉市で球磨川に合流する川辺川に建設が予定されていた。2008年に熊本県が折からの脱ダムの世論に押され計画の白紙撤回を表明。翌年、当時の民主党政権が中止を決めた

 ▼同時に中止された八ッ場ダムがその後再開し、去年の台風19号で流域の被害軽減に役立ったのはご存じの通り。数字は冷徹だ。川辺川ダムが計画された当時から、数字上、危機は目の前にあった。ダムによるにせよよらぬにせよ、この危機を乗り越える答えは今すぐ必要だ。


頼りになる存在

2020年07月06日 09時00分

 もう50年以上前の子ども向け空想特撮シリーズの話で恐縮だが、『ウルトラマン』(TBS)の最終回を今でも覚えている。それだけ強い印象を残す展開だったわけだ。相手が「宇宙恐竜ゼットン」だったと聞けば思い出す人もいよう

 ▼このゼットンがめっぽう強い。最終回にもかかわらず、ウルトラマンを倒してしまったのである。無敵のヒーローが怪獣に完敗するなど前代未聞。子どもながらその絶望感たるや―。地球もこれで終わり。誰もがそう思ったときに何が起きたか。それまでは脇役に徹していた科学特捜隊が踏ん張りを見せ、力を合わせてゼットンに勝ったのである。頼りになる存在が実はすぐ隣にいたと知って大いにほっとしたのだった

 ▼このコロナ禍で青息吐息の産業界にあって、建設業もそんな頼りになる存在のようだ。日銀が1日発表した6月の全国企業短期経済観測(短観)を見て思ったことである。企業の業況判断が軒並みマイナスとなる中で建設業だけが2桁のプラスを維持していた。先に厚生労働省が公表した5月の有効求人倍率でもこの見方は変わらない。全体は1・02倍(実数)と急落したのに、建設は3・92倍、土木は5・07倍、建設躯体は8・92倍と人手不足が続いている

 ▼お金は社会の血液。巡らなくなれば存亡の危機に立たされる。生産活動が停滞したコロナ禍の中でも、建設業はほぼ動きを止めなかった。脇役ゆえ目立たなくはあるが、社会を支え続けていたのである。先の見通しは必ずしも明るくはない。ただ、すぐ隣にヒーローがいると分かれば心強さも増す。


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