コラム「透視図」

土木の日に考える

2017年11月18日 07時00分

 きょうはインフラについて考える土木の日である。それにちなみことし見た中で最も印象深い土木施設は何だったろうと振り返ってみたのだが、やはり仙台湾南部海岸堤に勝るものはない

 ▼仙台、岩沼、名取、亘理、山元の3市2町にかけて築かれた全長29㌔の壮大な堤防のことである。東日本大震災の復旧事業として施工され、昨年完成した。津波という敵の侵入を防ぐ、日本版万里の長城といったところだろうか。10月に出た復興マラソンの15―23㌔地点がこの堤防沿いだったのだ。途中、コースを外れ上がってみた。傾斜こそ緩めだが7・2mの高さがある。天端からの眺めは実に壮観。はるかに伸びる堤防が太平洋と陸地を分けている。下のランナーが小さく見えた

 ▼ただ、これさえも多重防御を理念とする土木施設群の一部でしかない。そこから内陸に向かい、海岸防災林、人工の丘、かさ上げ道路と幾重にも壁が造られている。施工中の現場をあちこちで目にした。全体規模は驚くほどの大きさである。3・11から6年半。仙台の友人に聞くと、これだけ徹底して海を遠ざける事業が本当に正しいのか、との声も地元から出てきているそうだ。一方でいまだに海を見るのが怖いという人も少なくないらしい

 ▼土木も人の営みである以上、心を映すものである。であればあのときのすさまじい恐怖が、厳重で堅固な土木施設群を求めたとしても不思議はない。安んじるために大きな仕掛けが必要だったのだろう。それが正しいかどうかはまた別の話。遠からず冷静に見極められる時が来るのではないか。


拓銀破綻から20年

2017年11月17日 07時00分

 金融機関に自分の口座を開くのはたいてい就職を機にだろうから、おおよそ今40歳以下の人は「拓銀」と全く関わりなくこれまで過ごしてきたことになる。これが20歳以下ともなると、北海道拓殖銀行という都市銀行があったことさえ知らない人も多いのではないか

 ▼店頭に置かれていたマスコットキャラクター、クマの「たくちゃん」を見なくなって久しい。拓銀が経営破綻して、きょう17日でちょうど20年である。私事で恐縮だが、筆者が初めて自分で口座を開いたのも就職してすぐのことだった。給与振り込みに必要なためである。会社近くの拓銀支店で真新しい通帳を手にしたときは、社会人になったうれしさとともに身が引き締まる思いもしたものだ

 ▼個人にしてそうなのだから、会社ならなおさらだったろう。中でも拓銀本店との取引は、その会社に強い成長力があり、社会的信用も高いことの確かな証しとされた。「やっと拓銀さんと取引できるまでになった」。経営者らはそう言って喜んだと聞く。巨艦は一夜にして沈んだ。拓銀がバブルで開けた大きな穴は護送船団にもどうしようもなかったらしい。いや、あれは金融構造改革を進めるために国が本道と拓銀を実験台にしたのだとの説もある

 ▼そんな声が出るのもバブルを誘発した上、急激に収縮させた国の責任がなおざりにされているからだろう。ただ、それで拓銀が免罪されるわけもない。このところ日本の景気は拡大している。一方で政府も会社も難しいかじ取りが続く。操船を誤るとどうなるか。拓銀の残した教訓は今も新しい。


三日天下

2017年11月16日 07時00分

 天正10(1582)年のことである。明智光秀は主君織田信長に反旗を翻し、本能寺を不意打ちして信長を自害せしめた。数々映像化されているから実際に見たような気がしている人も多いのでないか

 ▼光秀はその後、軍勢を率いたまま二条御所に向かい信長の長子信忠も殺害。天下を手中に収めた。ただ順調なのはここまで。異変を知って遠方から急ぎ戻った豊臣秀吉によって、あっけなく倒されてしまうのである。あらためて言うまでもないが、目まぐるしく事態が動いたこの出来事を「三日天下」という。小池百合子東京都知事がおととい、希望の党代表を辞任するとの報を聞き、まず思い浮かんだのがその言葉だった

 ▼9月に不意打ちで党を設立してから衆院選走り出しのころまでは、間違いなく政権を引っくり返すだけの勢いがあった。天下人の座にあと一歩のところまで迫ってもいたろう。ところが、である。小池氏は本能寺に火を放つ寸前に自らを火だるまにし、自民軍に大勝利を進呈したのである。希望の党への受け入れで民進党の一部議員を「排除」しようとしたことが失速の原因とされるが、さてどうだろう。むしろ豊洲市場移転や五輪準備の混乱、衆院選での都政軽視で政治手法の雑さが露呈したからではないか

 ▼作家畑山博が歴史随筆「明智光秀の勝機」で光秀の性格に触れていた。いわく、「高級官僚程度の単純頭」「自信とプライドだけは人一倍」だそうだ。机上の計画を作るのは得意だが、実行のための手順を丁寧に練り上げるのは苦手だったらしい。いや、これは光秀の話。


チバニアン

2017年11月15日 07時00分

 自称梨の妖精「ふなっしー」を知らない人はあまりいないだろう。千葉県船橋市在住のいわゆる「ゆるキャラ」である。市非公認ながら、愛らしい外見からは想像もつかない機敏な動きと軽妙なおしゃべりで人気を博しているのもご存じの通り

 ▼ところで同じ千葉県に、もうすぐまた新たなスターが生まれるようだ。その名は「チバニアン」。いかにもゆるキャラのようだが、さにあらず。地質学上の時代名だという。「チバニアン」は「千葉の時代」を意味するラテン語で、地球のN極とS極が入れ替わる地磁気反転の痕跡を残す千葉県市原市の地層。ここが日本で初めて「国際標準模式地」として地質時代に名を刻む見通しになったのである

 ▼国立極地研究所など日本のチームがことし6月に命名を申請。国際地質科学連合はこのほど作業部会で投票を行い、内定の運びとなったそうだ。競合相手イタリアの「イオニアン」と僅差だったというから、関係者はふなっしーのように跳び上がって喜んだに違いない。もちろん名称は非公式でなく公式である。つまり、いずれ世界中の教科書に「チバニアン」の文字が登場することになるわけだ。更新世の約77万―12万6000年前で、マンモスやネアンデルタール人が大地を歩き回っていた時代らしい

 ▼「千葉日報オンライン」などによると地元は早くも、知名度が上がる、「千葉の時代」が来る、と盛り上がりを見せているのだとか。地質学上の画期的出来事だが、ゆるキャラのように名称はかわいい。子どもらが科学の門を叩く良いきっかけにもなりそうだ。


先週の日ロ首脳会談

2017年11月14日 07時00分

 本田技研工業の礎を築いた本田宗一郎と藤沢武夫は細かな話しをせずとも互いを理解していたという。理念を共有していたからこそのことである

 ▼その理念とは本田氏が言った「人間の生命に関することなんだから、その点にいちばん気を付けなければならない」(『経営に終わりはない』文春文庫)。根底にあるものが確固としてぶれないのだから、後は「あうんの呼吸」でそれぞれが自分の仕事をすればよかった。あうんの呼吸はそういったビジネスの世界だけでなく、いろいろな場面に登場する。外交の場も例外ではない。先週、APECに合わせて行われた日ロ首脳会談。安倍首相とプーチン大統領の間にもやはり、あうんの呼吸があったように見えた

 ▼プーチン氏は衆院選の大勝に祝意を述べた後、「これでわれわれの計画が実現できる」と喜び、首相も北方領土の共同経済活動具体化や平和条約締結に向け前進していく決意を語ったという。多くを語らずとも、分かり合えている雰囲気ではなかったか。いや日本が受け取るのは空手形ばかり。プーチン氏に手玉に取られているだけと冷ややかに見る向きもあろう。ただ、ロシア事情に詳しい評論家佐藤優氏は領土交渉が水面下で進んでいると見る

 ▼近著『ゼロからわかる「世界の読み方」』(新潮社)で、来年3月のロシア大統領選でプーチン氏が再選され権力基盤が固まれば事態は動くと分析していた。今回の首相再選が「あ」、来るロ大統領選が「うん」というわけだ。根底に平和と経済の理念を共有している限り呼吸が乱れることもない。


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