コラム「透視図」 - 北海道建設新聞社 - e-kensin

婚姻件数大幅減

2021年09月17日 09時00分

 新型コロナウイルスは一体いつまでのさばるのかと、ほとほと嫌気がさしている人も多いのでないか。終わったらあれをしたい、これもしたいと思い描いている人も少なくあるまい

 ▼詩人の小池昌代さんは、この事態が収束したときの象徴的な風景として「ヒトとヒトとの抱擁」を挙げていた。エッセー「抱擁」に記している。感染拡大を防ぐため人と人との間に不自然な距離を置かねばならないことへの反動だろう。そんな無粋な距離が男女の出会いにも影響しているに違いない。気になる統計を目にした。10日に公開された国の人口動態調査によると、2020年の婚姻件数(確定値)が前年比12.3%減の52万件にとどまったというのである

 ▼地域別でも北海道10.7%減、東京14.1%減、福岡11.8%減など軒並み1割以上落ち込んだ。婚姻件数は近年少しずつ減る傾向にはあったものの、それでも年2―3%程度。単なる延期もあるが、知り合う機会の喪失や先行き不安での諦めも多々あるとみられる。ウイルスは体だけでなく、社会にも深刻な害を与えているようだ。出生数の鈍化に加え結婚も減るとなると日本の未来は暗い。行動制限緩和の話をかたくなに避ける専門家もいるが、早めに検討に入らねば将来世代に禍根を残そう

 ▼小池さんはエッセーで想像を膨らませる。「向こうから、わーっと大きく手を広げながらやって来るヒト。迎え入れるヒト。背中に回された手。肩の上からのぞく顔。一対の人々」。そんな真っ直ぐで温かな感情表現が、何の心配もなくできる日が早く訪れるといい。


45歳定年制

2021年09月16日 09時00分

 普段はぼんやりと生きている人間が追い込まれることでやっと本気を出す。そんな展開が物語にはよくある。カンフー映画界のスター、ジャッキー・チェンの初期の作品などはその典型だろう

 ▼1979年日本公開の『スネーキーモンキー 蛇拳』をご記憶の人も多いのでないか。拳法道場で下働きをさせられているジャッキーが、他流派から一門つぶしの攻撃を受けることで自分の真の実力に目覚めていく話だった。英米には「臆病者を奮起させると悪魔とだって戦える」、日本にも「窮鼠猫を噛む」のことわざがある。洋の東西を問わず、崖っぷちに立たされると人間は眠っていた実力を出せるとの期待があるようだ。ただ、それは幻想に近い。ほとんどの人間は追い込まれるとつぶれてしまうのが現実である

 ▼新浪剛史サントリーホールディングス社長が提言した「45歳定年制」が波紋を広げている。定年を45歳に早めれば、危機感を抱いた社員が若いころからもっと頑張るようになるとの思惑があるらしい。発言は経済同友会が9日に開いた夏季セミナーで飛び出した。46歳からは自らの才覚で生きなさいというわけだ。社員の奮起を促すと言えば聞こえはいいが、体のいい脅しにほかならない

 ▼新浪社長のようないわゆる「プロ経営者」は大胆にリストラをして見かけ上の利益を出し、功ありと評価される例が多い。確かにそれで株価は上がるものの、社会的信用まで得られるのかどうか。新浪氏は翌日釈明したが社員を物や数字で見ている点は変わらない。「窮鼠」だって時には別のものをかむかも。


藤井聡太が三冠

2021年09月15日 09時00分

 日本の人気ロックバンド「BUMP OF CHICKEN」(バンプ・オブ・チキン)の楽曲の一つに『アンサー』がある。自分の生きるべき道を見つけたときの高揚感を歌ったものだ

 ▼中にこんな一節があった。「だからもう 忘れない 忘れない 二度ともう 迷わない 迷わない 心臓が動いてる事の 吸って吐いてが続く事の 心がずっと熱い事の 確かな理由が」。実はこれ、将棋アニメの主題歌である。15歳でプロ棋士になった少年の青春を描く『3月のライオン』(羽海野チカ)の歌だが、題材は同じ将棋でも村田英雄さんの「吹けば飛ぶような」『王将』(西條八十作詞、船村徹作曲)とはずいぶん趣が違う

 ▼この人に似つかわしいのは、もちろん『アンサー』の方だろう。将棋の藤井聡太さんである。おととい、第6期叡王戦5番勝負の最終戦第5局で豊島将之叡王を下してタイトルを奪い、既に持っている棋聖と王位に加え三冠を達成した。19歳1カ月での三冠同時保持は史上最年少という。将棋界の〝レジェンド〟羽生善治九段の記録22歳3カ月を28年ぶりに更新したそうだ。マスコミをはじめ周りは大騒ぎだが、藤井三冠は至って冷静である。対局後の会見でも「タイトルの数より、自分にとってはどこまで強くなれるかが一番大事」と発言。道を究めるに余念がない。冠は結果にすぎないというわけだ

 ▼藤井三冠にとって将棋は呼吸をするように自然で、心が熱くなるものなのだろう。見ているこちらまで不思議と胸が弾む。来月は竜王戦だ。今度はどんな強さを見せてくれるのか。


弱さ

2021年09月14日 09時00分

 おとといからきのうにかけ、全道で暴風が吹き荒れた。竜巻注意情報がひっきりなしに出ていたくらいである。甚大な被害は伝えられていないものの、気付けば外に置いてあった物がなくなっていたという人も多いのでないか。風は固定されていない物を容赦なく吹き飛ばす。弱い所を決して見逃さない

 ▼本欄にも度々登場する歴史人口学者のエマニュエル・トッド氏は新型コロナウイルスもそれと同じだと指摘する。ウイルスが猛威を振るった結果、目くらましの覆いが飛ばされ、社会の弱い部分が明るみに出たというのである。著書『エマニュエル・トッドの思考地図』(筑摩書房)に記していた。コロナ禍の世の中の様子を眺めると、なるほど納得せざるを得ない

 ▼日本の弱さは何だろう。トッド氏は言及していないが、その大きな一つは生活の糧を失った若者や社会的弱者、学びの場や友だちと楽しく遊ぶ機会を奪われた子どもたちへの冷淡さかもしれない。大変な時期だからと我慢を強いるばかりである。折しも自民党総裁選へ向けた動きが活発になっている。立候補予定者の主張も聞こえ始めた。ただ、今のところ天下国家を声高に論じる人はいても、子どもたちの苦境について親身に語る人はいないようだ。残念なことである

 ▼日本では高齢化対策の手厚さに比べ少子化対策の中途半端さが目立つ。子ども関連の施策の弱さもその延長線上にあろう。健やかに育つ若年層がたくさんいなければ政治家がいくら天下国家を論じても無意味だ。総裁選候補者にはその辺の自覚がどの程度おありだろうか。


9.11

2021年09月11日 09時00分

 まずありえない事象が現実に起こってしまうことを「ブラック・スワン(黒い白鳥)」という。不確実性科学とリスク管理について研究する認識論者ナシーム・ニコラス・タレブが同名の著書(ダイヤモンド社)で提唱した考え方である

 ▼その特徴は「普通は起こらない」「とても大きな衝撃がある」「事後には予測が可能」の三つ。世の中が大混乱に陥った後で、この簡単なことがなぜ分からなかったかと嘆くのだ。典型的な例が2001年のきょう起こったアメリカ同時多発テロ事件である。あれからもう20年もたつとは信じられない。イスラム過激派テロリスト集団アルカイダにハイジャックされた旅客機が、ワールドトレードセンターに次々と突っ込んでいく映像は多くの人の脳裏にいまだ焼き付いたままでないか

 ▼当時、備えは薄かった。テロは容易だったと識者も後から指摘している。あの日を境に、米国のみならず世界は大きく変わった。テロとの戦いが国際的な最優先事項の一つになったのである。NHKが先日、興味深いニュースを伝えていた。最近実施された米国の世論調査で、「自国がテロの脅威からより安全になった」と考える人が10年前と比べ大幅に減少したというのである。テロとの戦いに費やしたこの20年で、安心感は醸成されなかったらしい

 ▼掃討したはずのタリバンが先月、再び支配者としてアフガニスタンに戻ってきたのも不安に拍車をかけているようだ。何よりブラック・スワンの存在に皆が気付いてしまった。できるのは羽ばたかせないよう知恵を絞ることのみである。


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