コラム「透視図」

桜を見る会

2019年11月15日 09時00分

 昨今は派手な披露宴をしない「地味婚」を選ぶ人も増えているようだが、結婚式といえばかつては多くの客を集めて大々的に挙行する形式が主流だった。そこで頭を悩ませたのが誰を招待するかである

 ▼友人、親類縁者、上司、同僚―。できるだけたくさんの人を呼びたいが会場の広さには限りがある。絞り込まねばならない。さりとて「あいつが招かれてるのに俺が入ってないのはおかしい」と文句が出るのも困る。その後の付き合いも考えると、勢い「範囲を広げて集めてしまえ」となるわけだ。ついでに地元の議員にも案内状を送ったりして。そんなこんなで披露宴の規模はどんどん膨らんでいく。まあ、これと似たようなものでないか。首相主催の「桜を見る会」の話である

 ▼毎年4月に皇族や国会議員、各界の代表者、功労者を招いて開かれる会だが、人数と経費は年々増え続ける一方。安倍首相が後援会関係者を多数招待していることから、野党が会の私物化だと徹底追及の構えを見せているのである。安倍首相は今月19日に通算在職日数2886日となり、歴代1位の桂太郎と並ぶ。それだけ付き合いも増えるわけで規模が膨らむのも当然だろう。ただし当然だから良いというものではない。「李下に冠を正さず」で、政権の長としては自制あってしかるべきだった

 ▼民主党政権時も継続していた催しである。桜をめでながら各界の代表者が歓談する行事は日本らしくていいではないか。政府は招待基準の明確化やあり方を見直すため来年の会の中止を決めたそうだ。「地味会」も悪くないのでは。


はやぶさ2帰還

2019年11月14日 09時00分

 自分のやりたい仕事や、かなえたい夢があって都会へ出て行ったのだろうと想像する。ただし現実の話でなく松村和子さんの往年のヒット曲『帰ってこいよ』(平山忠夫作詞)の中で描かれた女性のこと。3番はこんな歌詞だった

 ▼「可愛いあの娘の 帰る日を お岩木山で 今日も又 津軽の風と 待っている 忘れはしまい あの約束の こんなにきれいな 茜空 帰ってこいよ 帰ってこいよ 帰ってこいよ」。宇宙航空研究開発機構(JAXA)の「はやぶさ2」がきのう、小惑星リュウグウでの1年5カ月にわたるミッションを終え帰還の途についたと聞き、その歌が思い浮かんだ。地球から直線距離にして2億5000万㌔彼方の宇宙で頑張っていたけなげな探査機の帰る日も、皆楽しみに待っているに違いない

 ▼はやぶさ2は事前のプログラム通りに化学推進系スラスタを噴射し、午前10時05分に毎秒9・2cmの速度でリュウグウからの離脱を開始したそうだ。JAXAによると至って順調だという。今後は18日頃をめどに重力の影響を受けない高さまで上昇、12月3日以降に推力をイオンエンジンに切り替え帰還軌道に乗せる。うまくいけば来年12月頃、地球に近づき、採取した貴重な砂や石などが詰まったカプセルを放出する計画だ

 ▼登山の世界ではよく「家に帰るまでが登山」といわれる。はやぶさ2もリュウグウがゴールではない。これから地球まで、頼る者もいない宇宙をさらに8億㌔も飛行せねばならない。どうか家まで無事で。必ず「帰ってこいよ 帰ってこいよ 帰ってこいよ」。


無断キャンセル

2019年11月13日 09時00分

 宴会の幹事役だけは引き受けたくない―。そう思っている人も少なくないのでないか。ただの飲み会だと言ってしまえばそれまでだが意外と責任は重い。くつろげて安く、おいしい店を選ぶことから始まり、当日も席順や会の進行に気を配る必要がある

 ▼ところがそれだけ意を尽くしても、評価は「あの会費でこの料理とはしょぼい」とか、「あいつに幹事を任せたのは間違いだった」だったりする。実に報われない。居酒屋にうその団体予約を入れ、無断でキャンセルした59歳の男がおととい逮捕された。幹事役を装ってのいたずらだったらしいが、ただでさえ気苦労の多い幹事が今度は店から疑われることになりかねない。迷惑な話である

 ▼男は6月下旬に東京都千代田区の居酒屋に偽名を使って電話し、参加人数17人、飲み放題を付けて1人1万3000円のコースを予約したそうだ。店は前日に確認したものの「変更なし」との答え。しかし当日は誰も現れない。店が警察に相談し、御用となったのだとか。今回は悪質性が高いとして逮捕につながったが、昨今は責任感のない幹事による無断キャンセルもよく話題に上る。店は費用をかけて準備しているのだから、客が来なければ大損害だ

 ▼経済産業省などのまとめによると、こうしたすっぽかしによる飲食店の人件費や食材、機会の損失は年間2000億円になるという。損害賠償に発展するケースもあると聞く。変更があればすぐに連絡した方がいい。幹事はたいてい仕切り上手な人が務めるから心配ないだろう。ただ、初めての人は心してほしい。


長野県の機転

2019年11月12日 09時00分

 人間は2000年以上前から光通信を活用していた、と聞けば驚くかもしれないが事実である。その方法をのろしという。「なーんだ」とおっしゃるなかれ

 ▼物理学者の寺田寅彦も紀元前にギリシャで使われていたのろしについて、「波長の長い電波ではなくて、ずっと波長の短い光波を使った」通信法だったと随筆に書いている。昼は煙を高く上げ、夜は火を燃やすことで情報を瞬時に伝えることができたのである。敵の襲来や命を脅かす大事件といった緊急事態が起きたとき、情報伝達は早ければ早いほどいい。素早く手を打つことによって、危機を切り抜けられる可能性が高くなるからである。通信の優劣が共同体の運命を左右してきたわけだ

 ▼現代もそれは同じ。先の台風19号で大きな被害を受けた長野県で県庁の発災時対応が高く評価されているという。SNSの「ツイッター」を通信手段として活用し、川の氾濫で孤立していた人ら約50件の救助につなげたのである。NHKがニュースで紹介していた。県危機管理防災課の職員がツイッターに上がってくる救助要請を独自に収集し、投稿者とも連絡を取り合いながら随時消防や自衛隊に情報を提供していったのだとか。ツイッターの見張り台で、職員が次々に上がるのろしに目を光らせていたようなものだろう

 ▼最初から計画していたわけではなく、状況を見た職員が機転を利かせて急きょ始めたらしい。ただの煙を「光波を使った」情報伝達のツールとしたように、通信手段に知恵が加わるとどれだけ素晴らしいものになるかを示す好例でないか。


新語・流行語大賞

2019年11月09日 09時00分

 ことしもユーキャンの「新語・流行語大賞」に30語がノミネートされた。なぜ選ばれたか分からない言葉も毎回あり、選考の基準に疑問も感じるが、まあそこは一企業のイベントである。難しく考える必要もなかろう。自分の情報感度を確かめる一つの目安にはなる

 ▼30語のうち3分の2くらい聞いたことがあればまず十分でないか。例えばノミネートナンバー1「あな番」を知らなくても日々の暮らしに支障はない。さて、と中身を見るとやはりというべきか。「4年に一度じゃない、一生に一度だ。」「ONE TEAM(ワンチーム)」などラグビー・ワールドカップ日本大会に関するものだけで五つもある。あの盛り上がりを思えば、むしろよく五つに絞り込んだものだ

 ▼スポーツがらみの語は他にも幾つかあった。イチローが引退会見で語った「後悔などあろうはずがありません」や、女子ゴルフの渋野日向子プロの愛称「スマイリングシンデレラ/しぶこ」など。スポーツ界が華やかだった証拠だろう。一方で政治の影は薄かった。おととしが12語、去年は3語あったが、ことしは小泉進次郎衆院議員をやゆする「ポエム/セクシー発言」と、あざとい選挙戦術を使った新党の「れいわ新選組/れいわ旋風」の2語のみ。参議院選挙や統一地方選挙もあったのだが…

 ▼去年は五つあった北海道関係の言葉は今回一つもなかった。五輪マラソンの札幌変更を受けた小池百合子東京都知事の放言「涼しい所というなら北方領土でやったらどうか」も長く語り継ぐべきと思ったのだが、リストにはなかった。


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