コラム「透視図」

森ビルが日本一の超高層

2019年08月26日 09時00分

 見上げればいつでも眺めることのできる近県の人ばかりでなく、日本人なら老若男女問わず誰でも口ずさめる歌だろう。文部省唱歌の「富士の山」のことである

 ▼タイトルを聞いて頭の中で自然と歌が再生された人もいよう。一番はこんな歌詞だった。「あたまを雲の上に出し 四方の山を見おろして かみなりさまを下に聞く 富士は日本一の山」。高さといい均整のとれた立ち姿といい、まさに日本一の山である。森ビル(東京)が東京都港区の虎ノ門・麻布台地区市街地再開発で、高さ日本一となる地上約330㍍の複合ビルを新築するそうだ。四方のビルを見下ろす都心の新たなランドマークの誕生である。超高層建築で高さ日本一と聞くと興奮を覚える人も多いのでないか

 ▼区域面積8・1㌶に及ぶ再開発のメインタワーで規模は64階、延べ46万平方㍍。52階までがオフィスや商業施設、インターナショナルスクール、54階からが約90戸の住宅になる。最上階の高さは東京タワーの先端とほぼ一緒という。世界一の超高層は米映画『ミッション・インポッシブル6』の舞台になったドバイのブルジュ・ハリファで828㍍。かなり開きはあるが地域性を無視して高さだけ比べても仕方あるまい

 ▼再開発では他に高層2棟と低層1棟を配し、生み出した空間を最大限緑化。非常時のエネルギー自給能力や帰宅困難者の受け入れスペースも用意するなど、災害の多い日本で安心して働き、暮らす工夫が盛り込まれている。均整のとれた全体像もなかなかのもの。富士山のように世界に誇れる街になるといい。


昭和天皇拝謁記

2019年08月23日 09時00分

 江戸中期に清貧の暮らしを続けながら人々に学問を教えた人物に陽明学者の中根東里がいる。儒教の一派だが頭でっかちに堕することなく実践に重きを置くのが陽明学。東里はその姿勢を生涯貫き通し、高い学識があるにもかかわらず、学問で職や金品を得ようとはしなかったという

 ▼そんな東里が教えを誰にでも分かりやすく伝えるため考えた「壁書」に一句がある。「出づる月を待つべし。散る花を追ふなかれ」。これからに期待すべきで、過ぎ去ってしまったことにはとらわれるなというのである。NHKがこのところスクープとして連日放送していた昭和天皇「拝謁記」を見ていて、その一句を思い出した。NHKも過去にとらわれるあまり、いささかバランスを欠いているのでないか

 ▼「拝謁記」は初代宮内庁長官の田島道治氏が1949(昭和24)年から53年まで、在任中の昭和天皇との対話を書き残したものである。確かに興味深い記録だろう。とはいえ放送にこれほど時間を割く話題とも思えない。例えば戦略の誤りを考察したり、戦争への後悔を表明したり。また旧軍には嫌悪感を示しつつ再軍備や憲法改正には前向きの意見を述べたりしている。先の大戦を率直に語った昭和天皇の言葉は生々しい

 ▼ただ、これらは象徴天皇制の下での言葉である。学術的には意味もあろうが戦後政治とは全く関係がない。「NHKから国民を守る党」の国会進出など近頃少々分が悪いNHKだ。過去にとらわれるというより、使える手は何でも使って存在感を見せつけようという苦肉の策なのかもしれない。


札幌のヒグマ騒動

2019年08月22日 09時00分

 胆振東部地震からもうじき1年になる。地震もさることながら、今まで経験したことのなかったブラックアウト(本道全域停電)にはずいぶん悩まされた

 ▼その時期、こんな意見がSNSに投稿され、物議を醸したのを覚えている人も多いのでないか。「電気がなければまきストーブで暖を取ればいい」。北海道には木がたくさんある。緊急時にはそれを使えばいい、というわけだ。道外を中心に賛同者が一定数いた。これがどれほど非現実的なアイデアかは道民なら考えるまでもない。原生林の中で細々と暮らしているわけではないのである。きっと自然豊かなイメージから短絡的に発想したのだろう。実態を知らぬゆえの無責任な提言というべきか

 ▼こちらも同じと思わざるを得ない。札幌市南区藤野周辺の住宅街をわが物顔で歩き回るようになったヒグマを射殺駆除した件で、市に多数の抗議が寄せられているというのである。麻酔銃で撃って森に帰せばよかった、かわいそう、といった意見が目立つそうだ。「どうしん電子版」によると20日までに530件の意見があり、5割強が反対と抗議。その大半が道外からだったという。まさか「くまのプーさん」(ミルン)が遊びに来ていると愉快な想像をしているわけでもあるまいが

 ▼ヒグマは雑食性の猛獣である。執着心が非常に強く人を襲う可能性も高い。人里に出て来させない工夫が必要なのは当然だろう。ただ、山から下りてきて人家にある物の味を覚えてしまった個体に対しては、心を鬼にするしかない。それが野生と向き合う本道の現実である。


文部省の不登校調査

2019年08月21日 09時00分

 ハリウッド映画を見ているとよくこんな場面に出会う。例えばニューヨークで強盗や殺人が起こる。街では大して珍しい事件でもない。いつも通り地元の市警が捜査に乗り出すと、途中からFBI(連邦捜査局)が出てきて捜査権を奪われてしまうのである

 ▼市警の責任者が言う。「FBIがこんな所まで何の用だ」。捜査官は高飛車に答える。「事件は今からFBIが担当する。今後は私の指示に従ってもらおう」。全米を揺るがす重大事件に関係する可能性が高いため、君たちのような田舎の警察には任せておけないというわけだ。地域の実情も知らないFBIに引っかき回されるのは気分が良くないものの、地元警察としてはどうしようもない

 ▼現場の小中学校も今、この地元警察と同じ気分を味わっているのでないか。文部科学省が来年度、学校を介さずに不登校の児童生徒から聞き取り調査する方針を固めたそうだ。『読売新聞』がきのう付紙面で伝えていた。「この件は文科省が直接担当する」である。学校の取り組みを信用しないわけでなく、「不登校の原因や背景を詳細に把握するため」が一応の名目。ただ、記事によるといじめの認知件数が過去最多を記録しているのに、学校側が挙げる不登校の理由にいじめが極端に少ないのだとか

 ▼故意のごまかしでないにせよ、事なかれ主義や事態の見過ごしがないとは言い切れまい。学校のような閉じた世界ではありがちなことである。映画では最後にFBIが地元警察に鼻を明かされることが多いが、さて、こちらの頭越しはどんな結果が出るのか。


あおり男逮捕

2019年08月20日 09時00分

 京都を舞台にした異色の青春小説『鴨川ホルモー』(角川文庫)などで知られる作家万城目学は学生時代に三度、「悪」を見たことがあるという。エッセー「街角に悪」に記していた

 ▼その悪を体現する「彼」を最初に見たのはとある定食屋。彼が隣席の学生に何か話し掛けると、笑顔だった学生は急に激高し店を飛び出していったそうだ。途中からは学生に非があると詰め寄り、警察沙汰にすると脅していたらしい。彼が違う相手にも同じ嫌がらせをしているのを万城目さんは街でたまたま三度目撃した。標的を探して難癖をつけ、しつこく絡んで相手を怒らせ、軽く小突かれでもしたら「警察を呼ぶ」とどう喝する。一種の娯楽なのだろう。万城目さんはそこに闇深い悪を見た

 ▼茨城県守谷市の常磐道で後続車に「あおり運転」をした上、強引に止め、運転手を何度も殴りつけた揚げ句行方をくらませていた男が逮捕された。「路上に悪」というべきか。この人物にも万城目さんが見た彼と相通ずる悪を感じる。静岡や愛知でも同様のあおり運転を繰り返していたとの情報が寄せられているそうだ。各地で「標的」を物色していたのかもしれない。暴行の場面を映像でご覧になった人もいよう。危険極まりない

 ▼しかも運転していた高級外国車はディーラーから借りたもので、返却に応じず約20日間、2000㌔も乗り回していたという。あきれた男である。誰しも運転していれば他の車にイライラさせられることはあろう。ただそこであおるかどうかはまた別の話。自分の中の悪の暴走を許してはいけない。


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