コラム「透視図」

天気不安定な5月

2019年05月22日 09時00分

 屋久島で縄文杉観光を楽しんだ300人余りの登山者らを立ち往生させた18日の雨は、50年に一度の豪雨だったそうだ。時間雨量が史上最多の100㍉に達した時間帯もあったというから、いかに雨の多い屋久島でも想定外の出来事だったに違いない

 ▼筆者も20年ほど前に同じ道を歩いた。登山道代わりのトロッコ道はよくこんな崖地に線路をと感心するくらいの箇所も多い。あの雨の中での歩行は難儀を極めたろう。土砂崩れなどで身動きが取れなくなっていた人々は、災害出動要請を受けた自衛隊や警察の懸命な救助活動により翌19日までに全員無事下山した。命を落とす人が出ず本当に良かった。迅速、的確な活動のたまものだろう

 ▼日本の南の屋久島を豪雨が襲ったかと思えば、北の本道では暴風である。道東自動車道の浦幌町付近で20日、風に巻き上げられた土ぼこりのため目前の車が見えないほどの視界不良が発生。バスやタンクローリー、乗用車合わせて10台以上が絡む多重交通事故を引き起こした。この北と南の気象現象、関係がないようで実は原因が同じ。日本列島を挟み太平洋に強い高気圧、日本海に低気圧が居座り勢力が拮抗(きっこう)したため、高気圧から吹き出した強い風が南には大量の水蒸気をもたらし、北では地吹雪のような土ぼこりの嵐を生んだのである

 ▼5月の日本は寒気と暖気が頻繁に入れ替わり、天候の急変に戸惑うことも少なくない。外出先で不測の事態に遭遇することもあろう。いざというときパニックに陥らないよう、今時期は空の表情に神経を研ぎ澄ませたい。


サッカーで誤審

2019年05月21日 09時00分

 あまり軽々しく使ってはいけないと分かっていても、何かあるとつい口から出てしまうひと言に「ばか」がある。覚えのある人も少なくないのでないか。悪気のない失敗に半ばあきらめの気持ちを込めて言う「ばかだなー」から、取引先の信頼を失墜するへまをやらかした上に反省もしない部下を叱責するときの「ばか野郎!」まで。状況によって度合いは異なるが、相手の間違いを何かしら非難する点は変わらない。ばかは漢字で「馬鹿」と書く。俗説では秦の高官趙高が皇帝に、「珍しい馬がおりました」と鹿を献上した故事からきているという。「いえそれは鹿でございます」と進言した家臣は皆処刑された。「私が馬と言えばそれが馬」というわけだ

 ▼秦の高官ほどの力はないにせよ、サッカーの主審の権威もピッチの中では絶対である。その主審が17日のJリーグ「湘南ベルマーレ―浦和レッズ」戦で、どう見ても明らかなゴールをノーゴールと判定した。見ていた誰もが「そんなばかな」と思ったろう。湘南の杉岡大暉選手のシュートは右ポストに当たって跳ね返り、左のネットを揺らした。たぶん双方の選手も観客も誰もがゴールを認識していた。ところが主審だけは見逃していたらしい

 ▼湘南が猛抗議するも判定は覆らず、鹿が馬にされたままゲームは続行されたのである。得点を先行された湘南は最後に見事な逆転ゴールを決め勝利したが、それで誤審が帳消しになるわけではない。日本だからかろうじて「ばかだなー」で済んだものの、欧州や南米なら暴動が起きていてもおかしくなかった。


ロスジェネ

2019年05月20日 09時00分

 どうしてこんな境遇に生まれてしまったか―。そう嘆く人も少なくなかったようだ。江戸時代の「部屋住(へやずみ)」の話である

▼武家でも商家でも、家を継げるのは嫡男のみ。次男以下は他家へ婿入りできなければ家に残って家長に養われるしか道がなかった。そんな者たちを部屋住と呼んだのである。大した仕事は与えられず結婚も許されない。生まれた順番が違っただけでである。運命を恨むのも当然だろう。日本のロストジェネレーション、いわゆる「ロスジェネ」も当時の部屋住と同じ悲哀を味わっているのでないか。バブル崩壊後の1990年代後半から00年代前半にかけての「就職氷河期」に世に出、安定した職に就けないまま40歳前後になっている人々のことである

▼仕事が非正規で収入が安定しないため、親の元で暮らし結婚に二の足を踏む人も多いと聞く。採用を絞ったのは企業側の都合なのに、経験もなく使いづらいからとやはり今も敬遠されがち。運命のいたずらとはいえ酷な話である。高齢化と人手不足に悩み外国人材受け入れを拡大しようとまでしている日本なのに、本来働き盛りの世代が活躍できる場はないときた。ロスジェネにとっては江戸封建時代と変わらぬ理不尽な世の中だろう

▼政府が先月、ようやく重い腰を上げた。経済財政諮問会議がロスジェネを「人生再設計第一世代」と位置付け、再チャレンジ支援の実行プログラムを今夏に打ち出す方針を固めたのである。かつて部屋住から剣豪や学者が輩出したように、ロスジェネのピンチもチャンスに変えられるといい。


縄文人全ゲノム解読

2019年05月17日 09時00分

 縄文時代の生活と聞いて思い浮かべるのはどんな情景だろう。今40歳代以上の人であれば、20―30人の親族を中心とした小集団が狩猟をしながら細々と暮らす姿でないか。これが30歳代以下だと、大きな集団が一つの地域で共同生活を営む様子を想像する人も多いはず

 ▼この違いは、ここ20年で日本史教科書の縄文時代の記述が劇的に変わったから。1992年に発掘が始まった青森県三内丸山遺跡研究の成果である。広い土地で大人数が一定の秩序をもって暮らせるだけの知的水準と文化を備えた時代。それが新たな縄文像として提示されたのである。北海道から沖縄までほぼ全域にわたり交易があったことも分かってきた

 ▼この女性も遠い地域の話に目を輝かせていたかもしれない。礼文島の船泊遺跡から出土した縄文女性の全ゲノム(遺伝情報)が高い精度で解読されたそうだ。国立科学博物館の研究員を筆頭とする共同研究チームの快挙である。古代人の高精度ゲノム解析は世界でもあまり例がないという。成功は大臼歯に保存状態の良いDNAが残っていたおかげだそう。それにしてもいろいろな情報が分かるものだ。血液型はAで髪は縮れ毛。目の色は茶色で肌の色は濃く耳あかには湿り気がある。お酒にも強かったらしい

 ▼昨年発表された復顔を見ると、どこかで見たようなおばちゃんである。縄文人のゲノムの10%が現代人に受け継がれているというからそれも当然か。お酒に強いと聞くと何だか親しみも湧く。4000年の隔たりはあるが、人間としてはそれほどの違いがないのかもしれない。


市議会議長席占拠

2019年05月16日 09時00分

 思い込んだら後には引かない人がどこの世界にも一人はいる。脚本家の向田邦子さんもエッセイ「唯我独尊」にそんな女性キエ子さんの話を書き留めていた

 ▼彼女は週刊誌の雑な印刷に腹を立てていたそうだ。ぶれた写真が多いからである。これは出版界の一大事と、あるとき雑誌の編集者に苦言を呈した。返ってきた言葉は「失礼だが、検眼をしたほうがいい」。実は老眼のため写真がにじんで見えていたのである。このキエ子さんとは向田さん本人のこと。「世の中で自分ひとりがすぐれている。私のすることに間違いなどあるわけがない。違っているのは相手であり世間である」。そんな考えは「お釈迦様ならいいが、凡俗がやると漫画である」。反省しきりだったらしい

 ▼札幌市議会で13日に起きた珍事を聞き、そのエッセイを思い出した。4月の統一地方選後初めて開かれた市議会で最年長議員の松浦忠氏(79)が自分が議長になると言い張り、9時間以上にわたり議長席を占拠し続けたというのである。地方自治法の規定により最年長の松浦氏が臨時議長に就いたまでは良かった。次に正式な議長を市議互選で選ぶのが慣例だが、松浦氏はこれを突如覆し立候補制を提案。候補は自分1人だとして議長就任を宣言したのである

 ▼「私のすることに間違いなどあるわけがない」と言わんばかり。議員が議会で議論をないがしろにするなど漫画にもならない。これがなんと道都札幌で起きた出来事なのである。同日深夜、ようやく新議長が決まった。松浦氏には肝心なものがぶれて見えていたのでないか。


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