コラム「透視図」 - 北海道建設新聞社 - e-kensin

WBC 侍ジャパン優勝

2023年03月23日 09時00分

 きのうは平日の水曜日ということもあり、午前中は仕事が手に付かなかった人も多いに違いない。ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の決勝、日本対米国戦が朝からテレビ中継されていた

 ▼両者一歩も引かない熱戦を繰り広げていたため、仕事をしていても攻防が気になって気になって仕方がない。歓声が聞こえるたび、席を立ってテレビの前に駆け付けてしまう。そんな光景があちこちで見られたろう。多少の仕事の遅れは大目に見てもらわねばなるまい。試合後は勢いがついて倍の働きができたはず。なにせ日本代表「侍ジャパン」の優勝がかかっていた。結果は、2009年以来3大会14年ぶりの世界一。力の入らないわけがない

 ▼3対2と日本の1点リードで迎えた9回表は、文字通りしびれるような緊迫の展開に思わず固唾(かたず)をのんだ。マウンドに立ったのは今大会最初からチームを引っ張ってきた大谷翔平。米国きっての強打者トラウトから空振り三振を奪い世界の頂点に立った。野球は筋書きのないドラマといわれる。1次ラウンドでは不調だった村上宗隆がイタリア戦で逆転サヨナラヒットを打ったり、源田壮亮が手の小指を骨折したまま神業のようなプレーを連発したり。誰がそんな心揺さぶられるシーンを想像できたろうか。全ての選手が輝いていた。栗山英樹監督がまとめ上げたチームの勝利だろう

 ▼初戦の中国戦で1番打者ヌートバーが初球ヒットを放ってから、ずっと楽しい夢の中にいた気がする。しばらくはニュースを眺めながら夢の余韻に浸ることにしよう。


藤井聡太竜王六冠達成

2023年03月22日 09時00分

 創造とは無から有を生じさせる奇跡のような出来事ではなく、二つ以上のものを統合して新たな価値をつくり出すこと―。地球物理学者の赤祖父俊一さんは、著書『知的創造の技術』(日本経済新聞出版社)でそう教えていた

 ▼創造力を引き出す方法はいろいろあるが、その基本となるのは「『とんでもない』ことを『とんでもある』ことに」する取り組みだという。常識や慣例、伝統をあえて逸脱してみるのである。赤祖父さんは時計を一つの例に挙げていた。職人が手作業で部品を丁寧に組み上げる伝統を、日本が電子部品を使うことで覆したというのである。その結果、より正確な製品が安く簡単に作られ、誰もが時計を持てるようになった。職人技と最新テクノロジーを統合したわけだ

 ▼将棋の藤井聡太竜王が19日、第48期棋王戦五番勝負(共同通信主催)を制して最年少で六冠を達成したと聞き、その話を思い出した。藤井竜王といえば、AI(人工知能)将棋で技を磨いてきた事実がよく知られている。六冠は1994年に24歳2カ月で到達した羽生善治九段に続き史上二人目。藤井竜王は20歳8カ月だから3歳半縮めたことになる。ただ注目すべきは年齢より年代だろう。藤井竜王は小さなころから高度なAIを相手にできた。対局ではAI研究からしか出てこない意外な指し手が随所に見られるらしい

 ▼将棋は実戦を多く重ねてこそとの常識を軽々と飛び越えてきたのだ。残る冠は名人と王座。全冠制覇は「とんでもない」偉業だが、それも「とんでもある」にしてしまいそうな今の勢いである。


酒に弱い人は注意

2023年03月20日 09時00分

 吉村昭といえば史実に基づいた臨場感あふれる小説に定評がある。一方で鋭い観察眼が光るエッセーにも味わいがあった。「酒は真剣に飲むべきもの」もその一つ。盛り場で見た青年3人について書いた一編である

 ▼足元のおぼつかない青年を他の2人が支えていた。吉村さんは記す。「かれは、すぐれたからだをもっているが酒には弱いのだろう。が、かれは友人たちと酒を飲むことをこばまず、たわいなく酔う」。酔った青年の顔に「人生の一大事である修行をしているような真剣さ」を感じ取り、3人の友情をほほ笑ましく思ったらしい。1971年のエッセーだが、今も変わらず見られる光景だろう。似たような経験をしている人も多いのでないか

 ▼ただ、これからはそんな行動も、温かい目では眺めていられなくなるかもしれない。酒に弱い体質の人が飲酒を続けると、悪性胃がんになる可能性が高まる。そんな事実を国立がん研究センターや東大のチームが突き止めたそうだ。米科学誌に先週発表した。報道によるとチームは治療が難しい「びまん型胃がん」患者約1500人のがん組織を大規模にゲノム(全遺伝子情報)解析。その結果、アルコールを体内で分解しにくい人に特有の遺伝子変異が、がんを誘発するリスクを有意に高めるとのデータを得たという。頻度や期間などの詳細は明らかでないものの、量の多さとは密接な関係があるのだとか

 ▼酒は無理してでも飲むという昭和の価値観が見直しを迫られるのは間違いない。もうすぐ4月。新人に人生修行を強いてはいけませんよ。先輩方。


札幌ドームに新モード登場

2023年03月16日 09時00分

 買い物をしているときに飲食料品の前でしばし立ち止まり、買おうか買うまいか迷うことが増えた。値段のせいではない。量である。一つでも多すぎるのだ

 ▼悲しいかな、これが老化というものか。歳を重ねるにつれ飲み食いできる量が減った。飲みたいし食べたいけれども、こんなにはいらないとなるわけである。たまに思い切って買ってみると案の定。半分ほど食べたあとは、冷蔵庫の肥やしになっていたりする。メーカーがそんな市場動向を見逃すはずがない。日本コカ・コーラが2020年に350mℓペットボトルを出してきたのはさすがだった。狙いは大当たり。500mℓは飲みきれないと敬遠する人も多かったのだろう。最近はどんな商品にも、こうした最適化の傾向が見られる

 ▼ただこれほど大きな商品となると、実現は難しかったのでないか。札幌ドームが内部を暗幕でおよそ半分に区切り、小分けして貸し出すことにしたそうだ。14日、報道陣にその「新コンサートモード」を現地公開した。本塁側と一、三塁側の三方に暗幕を張り、外野席側に2万人規模の会場を設けようというのである。北海道日本ハムファイターズ本拠地移転の穴を埋めるため、以前から検討が進められていた

 ▼5万人規模の催しはそうそうない。小分けして料金を抑えるのは妥当に思える。とはいえ音響効果も座り心地も良くはない会場で2万人規模の音楽イベントをどれだけ開けるか。勝負はこの先の売り方とサービスにかかっていよう。350mℓペットのようなちょうどよさを顧客に実感させられるかどうか。


侍ジャパン あす準々決勝

2023年03月15日 09時00分

 本道ともゆかりの深い思想家新渡戸稲造は主著『武士道』で、その基本原理の一つに「礼」を取り上げていた。数ある徳行のうちでも高く評価すべきものだというのである

 ▼ただ、形式に堕しているのは貧弱な偽物。本質は「思いやり」にこそあると説いていた。「礼の必要条件とは、泣いている人とともに泣き、喜びにある人とともに喜ぶことである」。稲造は礼が慈愛と謙遜から生じるとして、そう指摘していた。見ていてうれしくなるのは、選手たちがそんな古き良き日本の文化を体現してくれているからでもあるのだろう。ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で快進撃を続ける日本代表チーム「侍ジャパン」の話である。1次ラウンドを全勝で駆け抜け1位通過を決めた

 ▼12日のオーストラリア戦は初回から圧巻のひと言。1番ヌートバーが四球で出塁し、2番近藤健介がライト前ヒットでチャンスを広げると、3番大谷翔平が外野看板直撃の特大ホームランを放ち3点をもぎとったのである。仲間への思いやりや相手への敬意など礼の精神は試合中随所に見られるが、球場の外でもそれは発揮されていたようだ。チェコ戦で死球を出した佐々木朗希が13日、チェコの宿舎までおわびに出向いたというのである。お菓子を両手いっぱいに携えていったそうだ

 ▼死球はままあることで本来そこまでする必要はない。侍ジャパンの一人としての心意気に違いない。さあ、あすは準々決勝のイタリア戦だ。いずれ劣らぬ剣豪たちが力を合わせてどんな戦いを見せてくれるのか。今から楽しみである。


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