コラム「透視図」

黒部ダム完成55周年

2018年01月20日 07時00分

 富山県立山町の黒部ダムが完成してことしで55周年だという。一度は見たいと思いながらまだ行けていない土木施設の一つである

 ▼昨年10月放送されたNHKの『ブラタモリ』でダムの歴史や謎に迫ったのを興味深く見た。さすがマニア受けする番組と感心したのは、アーチダムとして計画したが施工途中に両岸の基礎岩盤の弱さが分かり、構造を見直した点にまで触れていたこと。黒部独特の重力式ウイングである。資機材輸送を担うダム工事の生命線「大町トンネル」貫通までの苦闘を描いた映画『黒部の太陽』も忘れ難い。事実に基づいた内容で、くしくもことしは封切りから50年の節目である。見どころは1691mまで掘り進んだところで遭遇した、大量の水を吹き出す破砕帯にどう立ち向かったかだろう

 ▼当初の想定にはなかったため、発注者の関西電力と施工会社は追加工事、新工法採用、人海戦術とあらゆる手を尽くす。このトンネルが抜けないことには本体の工事が進まないのだから必死である。関電の社長が施工会社にこう頼む場面も印象的だった。「できることは何でもやってくれ。いくらかかっても私が用意する」。当時、関西の電力不足は深刻で工期は待ったなしだったという

 ▼黒部は土木の基本を教えてくれる。詳細に調査しても施工時に不測の事態はあること、早期完成が経費削減や経済効果最大化につながること―。最近一部で問題視されているが設計変更はそれに対応する合理的仕組みである。開発局の件も未来が分からない以上、必ず枠に収まるならむしろその方が怪しい。


就職内定率最高

2018年01月19日 07時00分

 ニヒルな半面、熱くなると暴走して犯人を追い詰める型破りな刑事を天知茂が演じたテレビドラマ『非情のライセンス』(1973年―)を覚えているだろうか。毎週はらはらしながら食い入るように画面を見ていた人も多いに違いない

 ▼天知氏自身が歌い、ドラマの世界観をそのまま表していた主題歌『昭和ブルース』(作詞・山上路夫)が懐かしく耳に残る。「うまれた時が悪いのか それとも俺が悪いのか―」。大学生の就職内定率が昨年12月1日現在で86%と97年の調査開始以来最高を記録したそうだ。厚労省と文科省がおととい発表した。天知氏ではないが、いわゆる「失われた20年」の就職氷河期を経験した今30、40歳代の人はこの報に触れ、思わず「生まれた時が悪いのか」と割り切れぬ気分を抱いたのでないか

 ▼例えば03年、小泉政権中盤の内定率は73.5%。また10年、民主党政権ではここ22年で最も低い68.8%を記録している。自由な働き方の美名で非正規化の流れが進んだ時代でもあった。そのあおりをまともに食ったのがかの年代である。雇用の自由化といえば聞こえはいいが、要は新卒正規採用の手控え。非正規で働かざるを得なかった若者たちは結婚にも出産にも二の足を踏み、結果、世代間の格差が広がった

 ▼この問題が深刻なのは、最初の不利が歳を重ねてもそう簡単には挽回できないことだ。「俺が」でなく、ただ「生まれた時が」悪かっただけなのにである。就職内定率の最高記録更新は喜ばしい。ただ、非情な巡り合わせに悩む人が現在もいることを忘れてはいけない。


追悼特別展高倉健

2018年01月18日 07時00分

 俳優高倉健が亡くなってもう3年たつのかと考えると、時の流れは速いものだと感じないわけにはいかない。実は今、少々「健さん」熱に浮かされている。道立近代美術館で開催中の「追悼特別展 高倉健」を見たからである

 ▼健さんといえば北海道。『網走番外地』から『鉄道員(ぽっぽや)』まで、本道で撮影した映画は数多い。出演した205本のうち30本以上がそうだという。道理で親しみが湧くわけである。今回の追悼展の目玉は、205本の作品映像全てを見られること。一つ一つの作品は少しずつだが、大小さまざまな画面で1956年のデビュー作『電光空手打ち』から最晩年の『あなたへ』までを追うことができる。あらためて全作品を知ると役の広さには驚くばかりだ

 ▼時代ごとに眺めていくと、自分の「健さん」がいるのに気付く。他の人も同じとみえて、それぞれ最もなじみのある映画の前で立ち止まり一心に見入っていた。老若男女誰にでも身近な映画があるのも健さんならではだろう。演じるのは一貫して「自分のことは二の次にして他の人や信義のために戦う不器用だが純粋な男」。現実の世の中には希少な存在だからこそ多くの人が憧れたのでないか

 ▼健さん本人がそんな人だったらしい。主役でありながらスタッフや共演者には誰よりも気を遣い、ロケで世話になった地元の人には後々まで感謝を忘れなかったと聞く。同展は21日で終わる。気になっていた人は急いだ方がいい。全部の映像を見るには2時間程度かかるためそのつもりで。ファンならずとも一見の価値がある。


民進と希望で統一会派

2018年01月17日 07時00分

 その短歌の情景を想像すると甘酸っぱい気持ちになったり、少しひやりとしたり…。現代歌人栗木京子さんにこんな一首がある。「夜道ゆく君と手と手が触れ合ふたび我は清くも醜くもなる」

 ▼これから付き合おうとするところなのか、それとも付き合い始めてまだ日が浅いのか。夜道を並んで歩いてはいてもお互い相手の心が読めず、乙女心はジェットコースターに乗ったごとく上下左右に揺れ動いているのだろう。表現意図とはかけ離れていて作者には申し訳ないのだが、最近の民進党と希望の党の統一会派結成の動きを眺めていてこの歌を思い出した。先が見えない暗闇の中、並んで歩くことにした両党。こちらも手が触れ合うたび、理想に燃えたり打算に堕したりしているようだ

 ▼つまり歌が二人の初々しい心情を描いているのに対して、統一会派結成話は両党のどろどろした政情を描いているというわけ。とはいえ、現在までに会派結成には大筋で合意し、それぞれが党内手続きを進めている段階だそう。単独で戦っていては国会で埋没してしまう危険があるため、両党とも必死なのに違いない。何せ直近12月のNHK政治意識月例調査で、政党支持率は民進党が1.8%、希望の党が1.4%である。果汁含有量なら相当安物のジュースだろう。国民の目はかなり冷ややかだ

 ▼両党には安全保障関連法の扱いを巡って対立があるし、結局、民進党への先祖返りにすぎないとの批判も尽きない。さて、22日召集の通常国会には仲良くしっかり手をつないで出席できるのかどうか。お付き合いとは難しい。


軽井沢バス事故から2年

2018年01月16日 07時00分

 子どものころ、母親の帰りが遅いとわけもなく不安にかられたものである。誰にでも覚えがあることだろう。詩人谷川俊太郎もそうだったようで、「なみだうた」という詩に書いている

 ▼「子どものころよく座敷におでこをくっつけて泣いた 外出している母がもう帰ってこないのではないかと思って 母はどんなにおそくなっても必ず帰ってきて ぼくはすぐに泣き止んだ」。帰ってきたときのうれしさといったら。母親に限らない。待ち人が子どもであっても友人であっても、きのうと変わらぬ顔をきょうも見ることができる幸せ。それがどれだけ貴重なことか。この出来事を思い出すたびに考えさせられる。長野県軽井沢町で大学生ら15人が亡くなったスキーツアーバスの路外転落事故から、きのうで2年となった

 ▼遺族や友人たちはかなわぬ夢と知りながら、犠牲になった子や友が帰ってくるのを諦め切れずにいよう。現在もまだ心身両面で後遺症に苦しむ負傷者もいると聞く。つくづく残酷な事故である。前後してこの時期、バスの事故が相次いだ。原因のほとんどは格安にこだわる運行会社の行き過ぎたコスト削減。運転手の能力や健康を顧みず無謀な運行を続けていたのだ

 ▼今は建設業界はじめ多くの産業が安全軽視は最大のコスト増要因との認識を共有している。そんな中でのこの事態はバス業界の意識の低さの現れと見られても仕方ない。教訓を学ぶのに死者が出るまで待つのは愚かなこと。旅客事業の関係者はこれを機にいま一度、親や子、友の帰りを待つ人がいることを胸に刻んでほしい。


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