札幌市内の2021年新設住宅着工戸数は1万6071戸で、前年を3.4%上回り5年ぶりに増加に転じた。全体の55%を占める貸家は3.5%、持ち家は6%それぞれ伸びた。不動産市況に詳しい住宅流通研究所(本社・札幌)は1戸当たりの延べ床面積が貸家に比べ大きい持ち家が伸びるなど、経済効果が大きい1年だったと分析。22年は分譲マンションだけでなく戸建てにも価格上昇が及べば、需要に水を差す恐れがあると指摘する。
国土交通省の住宅着工統計のうち、市内分を集計した。
過去10年の年間平均戸数は1万6962戸で、これを5.3%下回る。
月別に見ると、1、3―5月は2割から4割の増加と好調だったが、6―8月は減少に転じ、前年を下回る戸数で推移。9―12月は増加、減少を繰り返した。
利用別では、貸家が3.5%増の8826戸で5年ぶりに増加した。14―18年の建設ラッシュによる供給過剰状態の収束や、アパート開発を手掛ける業者の再活発化などが要因とみられる。
持ち家は6%増の3743戸、分譲住宅は0.1%増の3483戸。給与住宅は90%増の19戸だった。
区別の戸数を見ると、中央区が2888戸で最も多く、13.3%増加した。約7割を占める貸家が16%の伸びを示した。続く豊平区は13.5%減の2407戸、3位は白石区で51.2%増の2233戸となっている。このほか、戸数で10区中8番目の南区(842戸)が54.8%増、7番目の厚別区(891戸)が46.8%と大きく伸びた。
同研究所の入谷省吾所長は「21年は分譲マンションの高値を背景に、建売住宅がとても伸びた」と振り返る。
20年はモデルハウスの見学者が少なく、住宅着工戸数も1割減と新型コロナウイルスの影響が色濃かった。21年はコロナ禍への慣れもあり、着工戸数がコロナ流行以前の水準に戻ったとみている。
22年の予想は「非常に難しい」としながらも、「資材や人件費が高騰する中、マンションだけでなく戸建ての価格も上がれば需要に水を差しかねない」と危機感を募らせる。
12月単月の新設住宅着工戸数は、11.5%減の1067戸に落ち込んだ。貸家が13.7%、持ち家が9.6%、分譲住宅が7.5%それぞれ減少した。