事業期間23―32年度を想定
函館開建は奥尻町青苗地区での直轄特定漁港漁場整備を構想している。青苗漁港の防災力向上や漁業者の就労環境改善が目的で、南防波堤改良などの総事業費に48億円を試算。事業期間は2023―32年度を想定している。このほど水産庁が事前評価で了解した。
青苗漁港は奥尻島南端にある第3種漁港で、小型定置網漁業や刺し網漁業、ウニやアワビなどの磯根漁業の拠点を担う。耐震強化岸壁を備え、大規模災害時の緊急物資輸送の拠点にもなっている。
漁獲の低迷や漁業者の高齢化が進む中、漁業経営の安定化に向けて水産物の付加価値向上や保管機能強化の必要性が浮上。耐震強化岸壁に至る緊急輸送道路が確保できていないほか、防波堤の耐津波性能が不足しているため、新規事業化を目指す。
事業費が最大となるのは南防波堤の改良で、31億2100万円を想定。延長433m分をかさ上げするとともに、マウンドを設けるなどして津波時に傾倒しないよう強靱化する。
アワビ養殖や活魚のいけす保管などに使う桟橋設置には7億4000万円を計上。延長170mで、耐震強化岸壁付近に設置する。このほか、港内に砂が流入しないように設ける防砂堤50mに4億6000万円をみている。
輸送施設関連では、耐震強化岸壁に至る道路の改良656mに2億2900万円を充てた。緊急物資の円滑な輸送のため、道路の液状化を防止する。耐震強化岸壁自体の液状化対策2000m²には8400万円を想定している。
漁業活動の効率化に向けては、マイナス2m物揚場の改良を計画。現状は天端が高く、水産物の陸揚げ作業の負担となっていることから、天端高を下げる。延長30mで事業費に8300万円を想定。どの程度天端を下げるかは漁業者からの意見を聞いて固める。
7月の水産庁による事前評価では費用便益費が1・44で「1を越えていて投資効果が十分に見込まれる」とし、事業の実施は妥当と結論付けた。今後、財務省の調査や協議を経て、事業化の可否を判断する。