コンクリートミキサー車の確保に現場が苦慮している。ドライバーの高齢化に加え、待遇面で有利な東北地方に車両が長らく流れているため。災復工事を抱える帯広や富良野では生コン工場から現場までの配送距離が長く、他地域の輸送会社に出荷を応援してもらうケースも出ている。それに引きずられる格好で、旭川や札幌では台数不足が顕在化。だが道内のミキサー車登録台数はここ数年で大きな変化はなく、むしろ乗り手の減少が根本的な課題になっている。
「アジテータ(ミキサー車)の運転手がいなく、今期は打設日を変更してもらうことも多々。ポンプ車も少なく〝次に回せるのは1週間後〟と言われた」(旭川地域の生コン製造会社)。「10月は本当にミキサー車の確保に苦労した。出荷量は前年より落ちているのに、それでも手配できないのだから深刻」(札幌市内の生コン工場)。
札幌や旭川などでミキサー車の確保が難しくなっている。民間企業の設備投資を中心に生コン需要が伸び、需給バランスに狂いが生じているため。だが、ここ数年で車両保有台数は大きく変わっておらず、ドライバー不足が最大の要因とみられている。
北海道運輸局によると、2017年3月末の道内ミキサー車保有台数は2084台。前年より6台増えた。ここ5年間で帯広や北見は減少傾向にあるが、全道では2000台強を維持している。
各運輸会社とも、新車入れ替えなど企業努力によって台数維持に努めているが、乗り手確保に苦戦を強いられている。他の運送業に比べ荷下ろしなどの肉体労働は伴わないが、その分で給与水準が低いため、募集を出しても人員はなかなか集まらないという。
ミキサー車が確保しづらいのは物件の追い込み時期に入る9、10月に多く、特に午前中に集中する。左官工による仕上げなど後工程に支障が出ないよう、生コン打設は午前8時から正午までが勝負時。裏を返すと、午後は稼働が少なく待機車両が多い。車両不足の背景には、現場の工程事情も左右している。
帯広や富良野では、工場から遠く離れた山間部などで災復工事が進められ、生コンの輸送距離が長い。決められた時間に相当量を賄うには一定台数で布陣しなければならない。旭川や苫小牧方面の輸送会社の中には、こうした災復現場に配送協力しているところもあり、地元での車両不足につながっている。
ある運輸会社の幹部は「同じ大型車両でもダンプは1時間や半日当たりの運賃体系だが、ミキサー車は1m³当たりの単価設定が一般的なので、1日の売り上げの上限は決まってしまう」と厳しい収益事情を話す。
ミキサー車の確保が難しくなっている背景には、生コン業界を取り巻く構造的な課題が影響している。悪循環の是正には時間を要するが、ユーザーとなるゼネコンと生コン工場、運輸会社による三位一体の議論が必要だ。