不動産業界で民泊参入の動きが活発化―。15日に施行される住宅宿泊事業法(民泊新法)に基づく、住宅宿泊管理業者の道内での事前登録件数は13日時点で73件、申請数で98件と100件に迫る勢いだ。受け付けを始めた3月は1桁台にとどまっていたが、施行日からの営業開始をにらんで急増。家具などが備わっているマンスリーマンションなど、民泊転用が容易な物件を抱える不動産業者からは、空き室を解消させ、新たな収益物件になるとの期待や、業態拡張への関心の高さがうかがえる。
同法は、民泊サービスの健全・適正化を図るため、住宅宿泊事業者の届け出制を採用。マンションなど家主不在物件の民泊営業に関しては、住宅宿泊管理業として国土交通大臣の登録を受ける必要がある。
これを受けて不動産業者は、賃貸物件での空き室の有効活用や、寮を民泊として利用する動きを活発化させている。
バスや不動産事業などを展開するじょうてつ(本社・札幌)は、空き室が目立っていた札幌市南区内の「じょうてつドエル真駒内」の1室を民泊として試験的に提供する計画だ。この物件のワンルーム8室は、1カ月以上の契約を条件に「短期滞在型ルーム」として貸し出している。うち1室の内装を改装し、空いた期間に寝具一式を備えて民泊用に転用するという。
近くに北海道インターナショナルスクールがあるためか、外国人の賃貸が多いそうで「民泊としても十分需要がある」(同社担当者)と自信を見せる。民泊経営のノウハウ蓄積や収益確保が見込まれれば、他の賃貸物件への拡大や、物件取得も視野に入れている。
マンスリーマンションなどを手掛ける日動(本社・札幌)も、空き室を利用した民泊への参入に意欲を見せる。担当者は「運営するマンスリー約350室のうち、100室程度を民泊利用として考えている」と話し、法人向けの長期滞在者や国内旅行者をターゲットに据える。
同社は、タクシー事業などを展開する互信ホールディングスが札幌市内に新設するホテルの企画・運営を担当している。住宅事業に続き、民泊と連動した宿泊事業も強める構えだ。
このほか、札幌や函館など道内でホテル展開を拡大する中和石油(本社・札幌)は、17年に取得した札幌山の手高学生寮の一部を民泊として試験利用する。
この施設は、同社外国人研修生向けの寮で、30室のうち空き室の5室を転用。場所は都心部からやや離れているが、「民泊利用者は地域密着型で、独自に探索を好む人は多い」(同社担当者)と期待。リーズナブルな価格帯で運営する。
新法制定により、管理者には消防法に基づく防火設備の設置など多くの制約が課される。これにより、「ヤミ民泊」のような業態は厳しく取り締られ、民泊需要が適正な事業者によるマーケットに戻ることが期待される。
築年数の古い共同住宅は、人口減少により空き室増加が見込まれているが、新たな収益物件に生まれ変わる手法として、不動産業界は民泊に熱い視線を寄せる。