硬石山とともに歩む 創業75周年のハラダ産業

2018年09月15日 13時00分

 札幌市南区の硬石山を拠点とするハラダ産業は、ことし創業75周年を迎えた。石工だった安保寅雄氏が1924年ころに石材業を手掛け、43年に「札幌硬石」として法人化した。北海道命名150年の節目を迎え、道内最古の砕石事業者である同社の歩みを振り返る。

 硬石山は、開拓史請負人の大岡助右衛門が1872年に発見。当時の札幌開拓には石材が不可欠で、円山など市内数カ所の山を調べた後、硬石山が適していると判断したという。北海道命名から5年後の1873年、硬石山は開山する。

札幌を中心に社会資本整備を下支えするハラダ産業の札幌事業所(硬石山)

 1880年、明治天皇の行啓時の宿泊所として豊平館が建造された。1888年には北海道庁舎が完工した。これらの基礎には硬石山の石が使われ、その採取・加工は本州から来た石工たちが携わった。国道230号の通称「石山通」は、硬石山から石を運んだ道ということで命名されたといわれている。

 石工たちは1887年ころから硬石山の麓に住み着き、徐々に集落として発展した。当時の採掘権は開拓史の命を受けた人か縁故者に限られていたが、少しずつ民間に払い下げられるようになった。

 安保寅雄氏は大正時代から硬石山の麓に住み着き、石材業を営んでいた。1934年に硬石山の採掘権を譲受。1943年に採掘権者4人と合同で札幌硬石を設立する。

 戦時中は帝国海軍の千歳第2、第3飛行場の滑走路工事で砕石を供給。建設資材の生産拠点として徴用された。

 戦後は、真駒内にあった米軍・第11空挺師団の駐留基地(キャンプクロフォード)へ砕石を供給。1946年4月には日本鋪道からジョークラッシャーを借り受け、札幌で初めて砕石の生産・販売を手掛けた。

 1962年ころのピークで年間60万―80万㌧を生産していた。しかし、この頃から公害問題が全国的にクローズアップされ、硬石山も公害防止が事業課題の一つとなる。1960年に札幌市と公害防止の覚書を交わし、翌年に地域の町内会と確約書を取り交わした。

 発破や騒音など公害防止に求められるハードルは、年を追って強まった。1978年には、それまでの確約書が協定書として代わり、改善が見られなければ「砕石場を移転してもらう」といった条件も盛り込まれた。

 それを受け、硬石山に関係する事業者5社は1979年、「硬石山砕石協同組合」を設立。切り羽の移動やプラント改修、跡地緑化の促進など構造改善に乗り出した。

 構造改善は1985年ころに終了。協同組合は解散し、「硬石山地区砕石業者連絡協議会」として現在に至っている。地域の町内会と植樹したり、児童の現地学習で開放するなど、今も地域と寄り添った事業展開を心掛けている。

■新たな付加価値創造へ

札幌硬石で作った皿や箸置きを手にする藤野社長

 ことしで会社設立から75年。奇しくも北海道命名から150年の半分に当たり、「これも何かの縁」と道の北海道150年事業に協賛した。年末には周年の記念行事を計画している。

 歴史を振り返るうちに「次世代への一歩を踏み出す上で、新たな付加価値を創造することも大切だと感じるようになった」と話す藤野徹弥社長。今は石の素材感を生かし、板皿や箸置き、ドアストッパーとしての製品化を検討している。

 「石工から始まった硬石山の歴史。皿や箸置きなど石を加工する事業が実現できれば、そのルーツに回帰することになる。これからも社会資本整備の基礎資材を供給しながら、地域や業界のために頑張りたい」と話している。


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