将来的な洋上風力発電を見込み、国土交通省と経済産業省は石狩市沖、島牧沖、松前沖の道内3区域を「一定の準備段階に進んでいる区域」として新たに位置付けた。事業実施には系統確保など課題解決が求められるが、早ければ2023年の促進区域指定にも期待がかかる。
再エネ海域利用法では、自然条件や系統接続の確保など洋上風力発電に向けた要件を満たす「促進区域」を国が指定する。その後、促進区域で洋上風力発電を担う民間事業者に最長30年間の占用許可を与えることになっている。
促進区域以外にも国は、前段階として「有望な区域」、利害関係者の特定・調整や、系統確保などについて見通しが立てば有望な区域に昇格する「一定の準備段階に進んでいる区域」を整理している。
国は13日、秋田県八峰町および能代市沖を5区域目の促進区域に指定した。「有望な区域」には山形県遊佐町沖など4区域を追加して計7区域としたほか、道内3区域を含む7区域を新たな「一定の準備段階に進んでいる区域」に位置付け、同区域は計10区域となった。
道内は、昨年の整理から段階引き上げが検討されたものの、今回「有望な区域」に選ばれなかった岩宇および南後志地区沖、桧山沖と合わせて5区域が「一定の準備段階に進んでいる区域」だ。年1回のペースで更新されていて、22年夏ごろを予定する次回整理での「有望な区域」入りを目指す。
民間事業者は促進区域指定後に公募するが、石狩市沖では、既に丸紅、グリーンパワーインベストメント、ジャパンリニューアブルエナジー、JERA、石狩湾洋上風力発電合同会社、シーアイ北海道合同会社、コスモエコパワーの7者が環境影響評価の手続きに着手。「コストが低い着床式の場合、風況が良好で遠浅な地形の石狩湾はまさに適地」「搬入など拠点となり得る石狩湾新港の存在が大きい」など石狩市沖の注目度は高い。
石狩市企画経済部の佐々木一真次長は「7者以外にも、現在2―3者から打診がある」と明かす。成長著しい石狩湾新港地域の工場などに洋上風力発電からの電力を供給し、エネルギーの地産地消を果たせれば、市の新たな強みにもなる。佐々木次長は「周辺漁業者らとの調整など、さまざまな準備を道と協力して進める」と意気込む。
また、海運大手の商船三井(本社・東京)が洋上風力発電に関連したニーズを見越して4月に北海道支店を開設するなど、民間事業者の動きも顕在化してきた。官民それぞれが国の号砲を待ち、体制を整えている状況だ。
(北海道建設新聞2021年9月17日付1面より)