生産性向上へ利点確認
赤川建設興業(本社・旭川)は、旭川開建発注の河川工事現場で、スマートフォンと全球測位衛星システム(GNSS)を活用した土工の出来形計測を独自に試行した。2022年度から本格導入される小規模土工ICT施工の核となる技術で、スマートフォンのカメラで撮影した映像から3D点群データを作成できる。従来の出来形管理より時間・人員ともに削減でき、導入コストも低く抑えられるメリットがあることを確認した。
国土交通省は、土工量1000m³未満の現場へのICT導入に向けた技術検証を実施した。小型バックホーへのマシンガイダンス搭載とモバイル端末を用いた出来形計測の2技術について、近く技術基準をまとめ、22年度から直轄工事で試行を開始する予定だ。
赤川建設興業は、本格導入に先立ってモバイル端末による出来形計測技術を、石狩川改修の内石狩川南永山地区河道再生の現場に独自で導入。この現場は3万m³の河床掘削が必要なICT土工の現場のため、発注者から指定されているトータルステーション(TS)による出来形管理と並行して試行した。
必要とされるのはLiDARを搭載したスマートフォンやタブレットとGNSSの電波受信端末。アプリケーションはOPTiM(本社・東京)の「Geo Scan」を用いた。
GNSSの受信機を計測面に置いて座標軸を定めた後、スマートフォンで計測面を撮影しながら移動。自動的に映像と位置データから座標がプロットされ、3D点群データを作成できる。
同社が現場の河床部の掘削面300m²を対象に通常のTS出来形管理と比較したところ、作業時間は53分から32分へと約4割減少。単独で計測できるため、作業員が必ず2人必要なTS計測に比べて人員も少なく済む利点を実証した。
25日には旭川河川事務所の安全協議会の中でデモンストレーションを実施し、10分程度で100m²の点群データを作成。同事務所もコスト削減や時短の面で有用な技術とし、今後の積極的な活用を奨励した。
小野寺一浩工務部長は「UAVやドローンに比べてコストが低いので、B、C等級の業者でも導入しやすい。操作も簡単なので若い技術者もすぐに覚えられる」と生産性向上に資する技術と評価。また、毎日の土工量の算出など工程管理にも用いることができ、小規模土工以外の幅広い工事に展開できる可能性も示唆した。