今春にも商用化へ
レアックス(本社・札幌)は、ボーリング孔内部を自在に見られる仮想現実(VR)を開発した。自社の高画質ボアホールカメラで撮影した360度映像をヘッドマウントディスプレーに取り込み、孔内に入った感覚で鮮明な地層を確認できる。映像には位置情報が付与されているため地層の方角も分かり、より確かな地質調査が可能。今後はソフト開発段階へ移行し、今春にも商用展開する。

高性能ボアホールカメラの映像をリアルに体感できる
地質調査を手掛ける同社は、最大2880ピクセルの高解像度で、映像にゆがみが出ない円すい鏡方式により360度撮影できるボアホールカメラ「BIPS」の技術を持つ。棒状のカメラをボーリング孔内に降下させて地質の観測が可能なため、ボーリングコアでは判別が難しい情報を取得できるのが特長だ。従来は、撮影した映像を2次元の画面で確認するしかなかったが、疑似的に立体視できるVRの技術を応用し、360度映像を効果的に見られるようにした。
統括者、システム設計者、機器組み立て・メンテナンス者からなる社長直轄組織「基礎的な研究チーム」で2022年3月に開発着手。マイクロフィッシュ(本社・札幌)の協力を受け、同10月に完成した。
ヘッドマウントディスプレーには、HTC社の「VIVE Focus3」を採用。BIPSの高画質映像を3K画質相当で美しく見せられる点を評価した。手元のコントローラーで上下移動や回転ができる。
映像データには位置情報を付与し、VRの画面には自らが向いている方角や地上面からの深度を表示できるようにした。従来の映像確認方法では難しかった地層や亀裂の方角を考慮した地質調査が可能となる。今後は社内へのVRの技術的な引き継ぎに移行し、操作マニュアルも近く完成する見通し。販売・レンタルの手法を決めた後、今春にも商用化する計画だ。

VRで見える孔内のイメージ
基礎的な研究チームで統括を担った営業企画部の鈴木利実課長は「データは高い解像度で残すことが大事。VRを通じてBIPSを普及させレアックスのファンを増やしたい」と話す。
レアックスは北海道科学大と人工知能(AI)に関する共同研究も進めていて、将来的には地質の状況をAIで自動判定できるシステムの構築も目指す。27日に開かれる研究報告で進捗が良好と判断されれば、具体的なAIソフト開発に移る。
現場でサンプルを取ってから事務所に戻って解析する地質調査は時間がかかったが、VRやAIで負担を軽減。鈴木課長は「多くの現場を回れ、少ない人数で受注を確保でき、納品スピードが上がる」と期待する。「支持されることで良い製品が生まれる。他社が参入しても差を付けられるよう、多少価格が高くても早いスピードで進めたい」と意気込んだ。