一定水温保つ特性利用 エネ消費抑制へ
地下水開発を手掛けるアクアジオテクノ(本社・札幌)は、空調に「地下水熱利用システム」を提案している。年間を通じて一定温度を保つ地下水の特性を利用し、夏は涼しく、冬は温まりやすくする空調の仕組みを開発。洗浄などの目的で地下水を使用する前段階に水温を冷暖房に生かせば、エネルギー消費を大きく抑制することができ、経済性や環境面に貢献する。
地中熱は一定してその地域の平均気温を保つ特長がある。くみ上げた地下水が気温よりも夏は冷たく、冬は温かいという温度差を生かし、快適な室温へ効率的に調整。夏は地下水の温度のみで冷房にし、冬は水温が水道水より温かいため、少ないエネルギー消費で温水にして暖房にすることができる。金沢大、三建設備工業(本社・東京)と共同研究をした。
国内では冷媒の配管を地中に通すクローズドループ方式が主流だが、今回は地下水をくみ上げて空調に使った後に地中へ戻すオープンループ方式を採用。井戸は2カ所設け、冷房で使い室温並みに水温が上がった地下水は、くみ上げた井戸とは別の井戸に貯水して帯水層で蓄熱する。暖房を使う時期に夏に使った温かい地下水の方をくみ上げて空調に生かすことでエネルギー効率を上げる。
空調の方法は、配管に水を通してファンで風を送るという従来からのファンコイルユニット(FCU)を採用。使用しているFCUを使いながら地下水熱利用システムに改修できるほか、既存の井戸を使用することが可能なため、施工の手間や設備投資を抑えられるのが利点だ。
冷房は地下水をくみ上げるポンプの力だけで動かすことが可能。暖房にする場合はヒートポンプで温める。冷蔵庫の仕組みを逆にした原理だ。ただ、冬季の配管凍結を防ぐため建物内では地下水本体を循環させず、不凍液を使用する。システムには太陽光発電を組み合わせることで停電時でも建物の機能を失わないようにする。
札幌市白石区の現社屋の隣で月末に完成する新社屋(RC造、4階、延べ597m²)にシステムを導入。建築には外断熱を取り入れた。国が定める建築物省エネルギー性能表示制度(BELS)に基づき、外断熱を全く使用しない建物と比べたところ、設計1次エネルギー消費量を68%削減すると認証された。
エネルギー効率を確かめるため、新社屋をサンプルとして長期にわたって性能データを取得する計画だ。技術系の部署が入る3階のオフィスでは天井板を取り付けずに配管の様子を見られるようにし、システムのショールームとしての用途を持たせる。
石塚学社長は「冷たいということもエネルギー」と指摘。例としてクリーニング工場で地下水を室内の冷房に用いてから洗濯に使うことで、エネルギー効率と就労環境の改善を図ることを挙げる。建物に限らず農業ハウスにも応用可能。「地震に強く、大雨が降っても濁らないため災害に強い」と井戸の利点を強調した。
アクアジオテクノは、スマートフォンで井戸の状態を確認できる井戸監視システムも開発している。地下水熱利用システムと組み合わせて訴求し、ユーザーが安全に地下水を利用できるようにする。