消防庁が調査 高い費用など背景
総務省消防庁がまとめた地方公共団体における防災行政無線等の整備状況によると、2023年3月31日現在で道内33市町村が未整備であることが分かった。このうち札幌など12市町村は25年度末までに整備する予定だが、残る21市町村は見通しが立っていない。未整備の理由としては費用負担が大きい、緊急速報メールもあり必要性を感じていないなどを挙げている。同庁は引き続き緊急防災・減災事業債などの財政支援措置を講じ、整備促進を図っていく考えだ。
防災行政無線は、市町村防災行政無線(同報系)、MCA陸上移動通信システム、市町村デジタル移動通信システム、FM放送など9つの手段を活用し、屋外スピーカーまたは屋内受信機などにより災害情報を市町村が放送するもの。
全国1741市町村を対象に防災行政無線などの災害情報伝達手段が整備されているかを調査。整備団体数は全体の96%に当たる1672団体、未整備団体数は4%、69団体で、前年同時期に比べ整備団体数は0.2ポイント増加した。未整備団体の内訳を見ると、25年度末までに整備予定が19団体、予定なしが50団体となっている。
道内で未整備なのは33市町村。札幌、美唄、芦別、深川、北広島、江差、厚沢部、余市、栗山、妹背牛、音威子府、小清水の12市町村が25年度末までの整備を見込む。
札幌市は本年度、機器老朽化に伴うデジタル防災行政無線システムの更新に向けた調査検討を実施する。自営網を整備する従来方式だけでなく、民間のネットワーク活用も検討。山地や高層ビルの立地を踏まえた利用可能性を探り、通信手段それぞれの災害耐性や導入・運用費を比較する。
一方、旭川、帯広、夕張、江別、紋別、砂川、当別、奈井江、上砂川、南富良野、占冠、美幌、津別、清里、訓子府、遠軽、滝上、大空、平取、新得、弟子屈の21市町村については25年度末までに整備する予定はない。
消防庁による全国市町村へのヒアリングでは、整備に至っていない要因として「面積が広く集落が点在するため、費用が高くなってしまう」と整備費用の高さを指摘する声や、携帯電話などの緊急速報メールで対応できる、災害が少ないといった理由で「必要性を感じない」との意見も寄せられたという。
ただ、全国的に見ても災害がいつどこで起きてもおかしくない状況のため、緊急防災・減災事業債など自治体の負担を軽減する財政支援の活用を促すとともに、伝達方法などについてもアドバイザー派遣を通じて技術的提案の助言を行っていく。