24年度予算案の道開発事業費 微増5609億円 

2023年12月22日 19時09分

23年度補正合算で7259億円 新規事項の住宅対策に3億円

 国土交通省北海道局は22日、2024年度予算案の北海道開発予算を公表した。一般公共事業費に当たる北海道開発事業費は、国費ベースで23年度当初費0・4%増の5609億6200万円。23年度補正予算と合わせた16カ月予算としては7259億1900万円となり、23年度当初と22年度第2次補正の合算と比較すると、2・2%増の伸びを示した。今回からの新規事項となった住宅対策には3億円、上下水道には5600万円を措置している。

 23年度補正予算分を合算した北海道開発予算全体としては、7386億9700万円に到達。伸び率は2・2%増となった。  

 24年度北海道開発予算の軸には「生産空間の維持・発展による食料安全保障及び観光立国の一層の強化」「我が国のエネルギー供給基地も担うゼロカーボン北海道等の実現」「デジタル関連産業の集積支援」「安全・安心に住み続けられる強靱な国土づくり」「ウポポイ等を通じたアイヌ文化の復興・創造及び国民理解の促進」「北方領土隣接地域振興対策」の6点を設定。23年度補正予算と合わせ、切れ目なく取り組みを進める方針としている。
 当初と補正の合算額同士の比較で各部門を見ると、道路環境整備を含む道路は2・6%増。高規格道路ネットワークの整備促進はもとより、震災など防災に向けた取り組み、老朽化対策などを進める。

 治水は2%増で、23年度当初比では横ばい。流域治水の考え方に基づき、北村遊水地や安平川水系安平川のほか、戸蔦別川4号砂防堰堤、樽前山熊の沢川3号砂防堰堤の整備など治水対策をより一層加速させる。新規では糠平ダム再生を採択。24年度は地質調査や環境調査などを進める。

 農業農村整備は2・2%増え、23年度当初比では微増。食糧供給力強化のため、農地の大区画化や汎用(はんよう)化とともにスマート農業など新たな技術導入推進による省力化や低コスト化を目指す。用水路、排水機場の更新やため池の耐震化により生産力維持・確保、災害リスクの高まりに対応する。

 森林整備は5・1%増だが、23年度当初比では0・3%減少している。間伐や主伐後の再造林等の森林整備を着実に実施するほか、路網整備により林業の低コスト化を促進する。

 水産基盤整備は2・6%増加し、23年度当初比で横ばいとなった。水産物の流通、生産力強化、高品質化のため漁港の高度衛生管理対策を推進。このほか、漁港施設の耐震、耐津波・耐浪化や戦略的な保全管理を推進し漁港ストックの最大限活用を図る。

 港湾は2・9%増。苫小牧港東港区でバースを1つ増やし、円滑なフェリー運航を目指す。カーボンニュートラルポート(CNP)形成のための支援も継続する。空港は7・6%増。新千歳空港でのデアイシングエプロン整備など継続事業に取り組むほか、緊急物資輸送に耐え得る施設整備を進める。

 当初予算ゼロ国債は、360億6800万円の枠を設定。治水77億8600万円、治山6000万円、道路211億8100万円、道路環境整備48億7700万円、農業農村整備15億1400万円、水産6億5000万円を配分している。

 ■解説
 2024年度北海道開発予算案は5726億円に上り、3年連続の増加を果たした。前年度当初比で約21億円増だが、財務省が公共事業関係費の引き締めを続ける中で、この結果は偉業と表現して差し支えない。

 それはなぜか。政府全体の公共事業関係費は24年度6兆828億円。前年度より26億円の増額だ。国土交通省の一般公共事業費は19億円増にとどまる。この増加の大半が道開発予算に配分された。

 21日に自民党で開かれた北海道総合開発特別委員会(北特委)などの合同会議では、伊東良孝委員長が道開発予算の獲得規模に言及。「北海道局はじめ道内選出国会議員ら関係者のおかげ」だと謝意を示していた。

 コロナ禍と50年カーボンニュートラルの台頭以降、本道に対する全国からの期待が上がり続けている。ウクライナ危機による世界的な食料、経済安全保障が脅かされ始めたが、これも本道にとってチャンスに転じた。再生可能エネルギー、食料生産基地としての役割を果たすため、本道開発の必要性は疑いのないものになった。

 結果として道路、治水、港湾、農業など主要部門は、ほぼ等倍以上で増加。全国に遅れる高規格道路ネットワーク整備の促進、減災・防災に寄与する治水、農作物の生産性向上を目指す農業基盤整備―いずれも将来の国益に貢献する重要な事業だ。

 23年度予算が前年度予算額よりも約136億円増となり、国交省はじめ北海道局は「16カ月予算による切れ目のない事業の執行」を強調する。

 だが懸念もある。資機材、エネルギー価格の高騰に加え、24年度からは時間外労働上限規制の適用が始まる。1日当たりの労働時間が縮まれば基本的に工期は延び、1工事の価格は上昇。頭打ちの予算規模が、公共事業量の一定確保に不安の影を落としている。

 担い手確保と賃上げの対応も引き続き求められる。国交省は24年度も、賃金上昇の実勢などを反映した公共工事設計労務単価の改定を予定している。また、下請け事業者に対して適切な労務費が支払われるような法改正も見込む。こうした手続きをスムーズに進め、地域を支える建設業者の経営が守られるべきだ。

 また、地域建設業者などの働き方改革、生産性向上の取り組みに、道内工事の施工能力の確保が懸かる。24年度は第9期(次期)北海道総合開発計画の初年度。新時代はもう始まっている。(建設・行政部 高橋秀一朗)


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