■日本ブランドイメージ生かせ
ノボシビルスク市最大級の展示会場「エキスポセンター」で開かれたシベリア最大の建設展示会「SibBuild(シブビルド)」。ことしは2月13―16日までの4日間で延べ7993人が来場した。開催初日の13日、開場から数時間とたたずに明らかに人だかりが目につく一角があった。日本企業の出展ブースだ。
目に飛び込んでくるのは、青い陳列棚に所狭しと並ぶ青井商店(本社・旭川)のゴム手袋。価格帯は約1000―8000円で、最も値段が高い商品は最高マイナス60度に耐えられる。ブースで通訳を介して商品を説明する青井貴史専務が自ら極寒のサハ共和国で性能テストしたお墨付きの品だ。昨年からノボシビルスクで代理店販売を開始し、既に20万―30万足を売り上げ、庭いじりや狩猟、釣りといった日常使いで一般客から好評だという。ロシア語よりも売れ行きが良いからと日本語パッケージも混在させていた。
来場者に商品説明する青井専務
続けて展示される細いらせんやワイングラスのような形状をした木工細工に見学者らの足が止まった。旭川機械工業(同)が持ち込んだのは、3次元(3D)プリンターのように簡単に木材加工製品が作られる3Dターニングマシン。3DCADの作図を基に、高速回転するカッターで木材を精密に削り出す。
他の参加企業と違い、国内市場を中心としていたが、昨年極東地域で開かれた展示会でサンプルが好評を得たことから、木材産業が盛んなロシアの需要調査に乗り出した。
40cmと90cmの木材に対応した2機種はいずれも1000万円超え、関税や輸送費を反映させるとかなりの高額になる。元手を取るまでに掛かる期間や機械寿命に関心が寄せられた。関山真教常務は、技術評価に好感触を感じる一方で、「他社製品では高い物で4000万円ほど。国内でも価格は低い方だが、販売台数を増やし、価格を抑える工夫も必要」と話した。
ブースの奧では壁一面に貼られたネオトレーディング(本社・札幌)の金属製サイディングの前で商談が進んでいた。既に販路を持つ極東地域ではショールームを設置し、戸建て住宅向けに約1年半で9000枚を出荷しているが、ノボシビルスクでの実績はまだない。
■寒冷地技術適応の立証必要
競合はロシア企業だけではない。窯業系サイディングのニチハ(同・名古屋)やケイミュー(同・大阪)は既にロシア国内に自社拠点を設けており、市場に出回る低価格の中国製品も無視できない。
阿部武士社長は「ノボシビルスクの外壁材はビニールや窯業系が主流で、金属製はまだ市場の1割程度」と参入の可能性に期待を寄せるが、「日本製のイメージが良くても使ってみなければやはり良さは分からない。モデルルームなどで展示して性能試験などできれば」と意欲的だ。
ブースを訪れた市内の建設業者からは「シベリアの方がずっと寒いので寒冷地技術がどう適応できるのかもっと知りたい」との声も。輸出する際には、ロシア国内の認証基準やヨーロッパの規格に対応した品質保証が必要だ。また、海上輸送と陸送で納入には1カ月以上かかるため、現地での在庫確保が望ましい。
国際物流の要衝ノボシビルスクへの進出は、アジア・ヨーロッパ全土に通じる市場開拓の切符になり得る。現地で浸透する日本のブランドイメージを生かさない手はない。
多くのロシア人が寒冷地技術に高い関心を示した