測量業界で、普通科を含む中高生のインターンシップを積極的に受け入れる動きがある。札幌市測友会の矢橋潤一郎会長は、自身が経営する北海航測(本社・札幌)で、ことし3校から13人の生徒を受け入れる。企業側の負担軽減などの課題はあるが、土木系の人材獲得競争が激化する中、業界の人材確保対策として、幅広く若者の関心をかき立てる道を探る考えだ。
■人材獲得が困難
北海道測量設計業協会が7月に実施した会員アンケートによると「人材不足」「技術者高齢化」は経営課題のトップ2で、若手確保は全体の63%が難しさを感じている。
人口が集積する札幌圏でも「難しい」と感じる企業は55%に達し、札幌市の受注企業でつくる札幌市測友会でも人材確保は重要なテーマの一つだ。
新卒生などを対象にした合同説明会に参加する企業も多いが「生徒や学生がほとんど来ない場合もある」と矢橋会長。
そうした中、目を付けたのが自身が測量設計分科会長を務める札幌商工会議所を通じ、学校側から協力要請の多いインターンシップ。「生徒、学生に直接仕事や魅力を伝えられるインターンシップは貴重な機会」と強調する。
■ICT関心高く
普通科の生徒にも目を向けた。7月に札幌琴似工高の生徒4人を皮切りに、8月は市立開成中等教育学校5人、11月には市立札幌大通高4人を、それぞれ学校からの要請で2日間受け入れる。
測量や計測のICTは若者に受けがよく、情報処理知識の重要性は高まっている。土木系人材の獲得競争が激化する中、幅広く仕事や技術を伝え興味をかき立て「将来の選択肢」に入れてもらう戦略だ。新たな学校や教師にネットワークを形成する狙いもある。
6日には中高一貫校の開成校から3、4年生5人が訪問。最前線で働く社員の指導で空撮画像を使った立体視画像の生成や、航空レーザー計測など先端技術の一端を体験した。
■支援充実を模索
開成4年の菊地慧さん(16)は「航空機に興味があった。技術知識は難しいが、聞くのと体験するのは大違いで、見ていて面白い」と、関心を持たせることには成功した様子だ。
一方で課題も見えてきた。北海航測は社員約40人で、業界内では平均を上回るが、専業者で見れば道内平均は10人前後。 その第一線で働く戦力の貴重な1日を受け入れ対応に割く必要があり、その穴埋めは企業にとって大きな問題だ。社員数が少なければ、人員を割くことすら難しい。
札幌市建設局は、インターンシップ受け入れ企業に10万円の助成金を出す制度を設けているが「3日以上という規定があり、学校の求める2日では活用できない」など支援は十分と言い難い。
「それでも、インターンシップは将来の可能性をつくる貴重な場」と矢橋会長。行政の支援充実を求め、測友会を通じた情報提供、複数企業での対応など企業負担の少ない方法を考え、業界の人材確保策につなげることを模索する。