農作物貯蔵庫化へ研究 北見工大の舘山准教授 実験重ねる
佐呂間町の国道で2009年に新佐呂間トンネルが完成したことにより廃道になった旧サロマトンネル。北見―遠軽間を結ぶ最短ルートとして物流の幹線を担っていた。地域住民から惜しまれながら閉鎖したトンネルを10年から農作物の貯蔵庫として再利用する研究を北見工大の舘山一孝准教授が進め、研究結果をまとめた。オホーツク地区は生産量日本一を誇るタマネギなど農作物の一大生産地。実現できれば地域の貴重な農作物の備蓄基地となる。研究を実施するに至った経緯や課題、旧インフラ活用の可能性を探った。(網走支局・出崎 涼記者)
ルクシ峠にある国道333号の旧サロマトンネル(高さ4・5m、開口7m、全長1660m)は1988年に完成。しかし、道路は急カーブが続く難所になっていてドライバーへの負担が大きかった。加えて土砂崩落が発生するなど危険も付きまとった。網走開建は抜本的な安全対策として新ルートを検討し、04年から新佐呂間トンネルに着工。09年3月に完成したことで廃道となった。
研究のきっかけは北見市の農家から「廃道になったトンネルを貯蔵庫として利用できないか」という声だ。畑を全て使うと農作物の供給過多になり、価格が下がってしまう。生産量を調整して価格をコントロールしているのが現状だ。
そこで、多く作った野菜を貯蔵すれば、生産量の増加や廃棄回避につながるのではと発案した。道内ではダムの管理道を使ったワイン貯蔵の実績はあるが野菜を使った事例はない。舘山准教授は「秋に収穫された農作物を翌春まで貯蔵し、新鮮度や栄養、食味向上の効果が得られるのでは」と考え、研究を開始した。
廃道後は北見市側の橋梁を撤去していたが、佐呂間町側は管理道として町が維持していたことから、10年にトンネル内が貯蔵に適した温度・湿度かを適正調査した。トンネル内6カ所に無線通信式の温湿度計を設置し、インターネット上でデータ閲覧できるシステムを構築して検証した。
■貨物コンテナで温湿度を調整
適正調査は3年間続けた。温度調査の結果は、中央部は1年を通じて8・3度プラスマイナス0・8度で安定している。しかし、北見側は夏季に最大18度、佐呂間側は冬季にマイナス4度と場所によって異なる温度特性がある。中央部以外は温度変化が大きく、野菜に適した環境制御が必要であることが分かった。
湿度については、夏が100%の高湿度で、冬が20―40%の乾燥状態。8―11月の収穫時期に湿度が低い結果に「逆の結果が望ましかった」と舘山准教授。「温度を0度に保ち、湿度を上げる必要がある」と話す。
温湿度をコントロールしようとトンネル中央部に貨物コンテナを設置。結果は、温度8・4度プラスマイナス0・7度で一定、湿度は77―82%と高湿度を記録した。「使いたい温湿度を人工的に作ることができる。環境のコントロール次第で野菜の長期保存も可能なのでは」と貯蔵実験に期待をうかがわせた。