「お客さんには、注文から製品を納めるまで8カ月から10カ月かかると伝えている」(石狩管内のネジ類卸会社)―。全国的な課題になっている高力ボルトの品不足。鉄骨同士をつなげるときに使われる鋼製の部品で、主に橋梁や建築物などを建てる際に使用する。全国的な市街地再開発の動きと、ボルトメーカーに対する材料(鋼材)供給が追い付かず、昨年5月ごろから品薄状態が続いている。
「一時的なもので収まると思ったが、状況は改善していない。予定にないスポット物件はボルトを手配できないので、やむなく仕事を断っている」(上川管内の鉄骨加工業者)。
高力ボルトのメーカーは全国に8社ほどあるが、どこも在庫不足の状況は一緒のよう。いずれも生産工場は本州にあり、海運が絡む流通形態なので、北海道は本州より納期が延びてしまう。国土交通省が18年11月に公表した需給動向のアンケート結果で、北海道ブロックの納期が7・8カ月程度と、全国平均より2カ月近く長かったのは、そうした流通事情も影響しているようだ。
札幌市内の鉄骨加工会社はゼネコンとの情報共有を迅速かつ密にし、ボルト不足から着工が遅れたり工期が伸びたりしないよう最善を期している。室蘭市内の建設会社は運よく高力ボルトの在庫を抱えていたため、納期の長期化に悩む本州の同業他社へ製品を融通したという。
「鋼材不足からS造物件の立ち上がりの遅さがクローズアップされると、設計段階からRC造やW造が好まれるのではないかと思い心配だ」(上川管内の鉄骨加工業者)といった声も聞こえる。
一方、対極にあるコンクリート業界からは仕事の平準化を求める声が根強い。札幌市内のコンクリート会社は「型枠大工や鉄筋工の不足から、ここ最近はRCよりもS造が支持されている。しかしボルト不足だからといって、人手不足の状況は目下変わらず、再びRC造が台頭するとは思わない。それよりも仕事が平準化されることが、建設資材の安定供給には必須だと思う」と話している。