札幌都心部でホテル進出の勢いが続いている。判明分だけで2019年上半期(1―6月)は計画・着工合わせて計9件に上る。土地売買が盛んだった薄野だけでなく、大通や札幌駅周辺での出店も目立ってきた。20年7月開催の東京五輪までにオープンを目指すホテル事業者は多く、今後も外国人観光客の増加や低金利を背景に、供給が進むとみられる。
札幌市に届け出があった建築計画の標識を本紙がまとめた。
19年に入って着工したホテルは6件。公益財団法人鉄道弘済会(東京)は札幌駅前にある弘済ビル[MAP↗]を現地建て替えて、入居するJR北海道ホテルズ(札幌)が「JRイン札幌北2条」を20年7月にオープン。大通で着工したアルファコート(札幌)の宿泊施設は、フィーノホテルズ(東京)が運営者となり「ベストウェスタンホテルフィーノ札幌」を開業するなど、道内外の企業が出店にしのぎを削っている。
7月以降で年内に着工を予定する分は、ユニホー(名古屋)や大和地所(横浜)、丸金浅野商事(札幌)のビジネスホテル3件。ユニホーは主力の分譲マンションや戸建て住宅の販売だけでなく、ホテル開発事業の強化を図る。宿泊施設は完成後に土地と建物を売却する方針だ。
建築計画に上がった以外にも、大型案件が多数浮上する。
23年をめどにサンケイビル(東京)が札幌パークホテルの建て替えを計画。フランチャイズ契約を結んだヒルトン(米国バージニア州)が「ヒルトン札幌パークホテル」の出店を予定している。
不動産業のヒューリックは、札幌駅前通にある同社の札幌ビルと札幌NORTH33ビルを一体化した新施設にホテルを備えるなど、今後、グレードの高いホテルの供給が都心部で進むとみられる。
日本不動産研究所の担当者は、札幌市内のホテルが年々、急激に増えているとしながらも「観光のハイシーズンになると客室が足りないと話すホテル事業者は多い」と指摘。土地価格が割安だった薄野が高騰し始めたことで、今後は札幌駅前周辺や大通の開発が中心になってくると予測する。
一方、近年は不動産を所有する売り主側が強気の価格を提示していることで、「成約に至らないケースも増えてきている」と分析。建築資材や人件費も高騰していることから「小規模なホテルでは採算が合わなくなるのでは」と、危惧している。