シニア世代に向け賃貸住宅仲介 リビットの事業に注目

2020年01月04日 10時00分

細やかな対応 武器に

 創業間もない不動産会社リビット(本社・札幌)のシニア世代向け賃貸住宅仲介事業が注目されている。不動産オーナーとの交渉など細やかな対応を武器に主力事業として展開。北海道一のシニア世代向け不動産会社を目指している。

 賃貸住宅を探すシニア世代と空室に悩む不動産オーナーを結び付ける目的で、事業の8割はシニア世代向け賃貸住宅の仲介。社名は「Living With This Town(この街と暮らす)」に由来する。

「困っている高齢者にたくさん会いたい」と話す武藤社長

 武藤忠雄社長は東京都出身の55歳。24年間物流会社で勤務し、全国転勤に伴い13回の引っ越しを経験した。転勤のたびに不動産会社を利用していたため、業界に詳しくなったという。「50歳になったらサラリーマンを辞めて独立しようという意識が昔からあった。不動産会社で挑戦してみようと思った」と明かす。

 53歳で退職。宅地建物取引士の資格取得や開業手続きを経て5月に会社を設立した。事務所は札幌市産業振興センターのインキュベーション施設「スタートアップ・プロジェクトルーム」に構える。

 70代くらいの女性が不動産会社に来店し営業マンとやりとりをする光景を見たことが、シニア世代向け事業展開のきっかけ。「女性は『これで3軒目なんです』と困った様子だが、営業マンは早く帰ってほしそう。すごく雑な対応をしていると感じた」と話す。

 高齢者は決断や書類のやりとりに時間を要する。手間と時間がかかるため、不動産会社は高齢者を敬遠しがちだ。不動産オーナーは孤独死による清掃費負担や風評被害を恐れ、高齢者向けの賃貸には慎重になる。

 しかし、賃貸住宅を探す単身高齢者は増えている。戸建てが広すぎる、子どものそばで暮らしたい、立ち退きを迫られたなど理由はさまざまだ。ニーズがあると見込み、シニア世代に寄り添った事業を展開する。

 シニア世代は階段をあまり上る必要がない低層階やバス停の近く、買い物に便利な場所を好む。札幌市内の1DKの平均家賃は5万―6万円だが、高齢者が望むのは3万―4万円。家賃を低く抑えたい分、古い物件でも入居する傾向にある。静かに長く住んでくれる特徴がある。

 札幌市内の物件約350件を紹介可能。店を構えて待つのではなく、顧客の元に向かう姿勢を大切にしている。自宅やカフェ、福祉施設など呼ばれた場所に赴く。「高齢者の相談相手になりたい。不動産だったら武藤さんがいると言ってもらえるような営業がしたい」と考えている。

 高齢者は人生の先輩。分かりやすい言葉で説明することと敬うような言葉遣いを心掛けている。生前整理診断士などの資格を生かしてアドバイスをするほか、緊急連絡先や人生最期のプランまで聞き取る。プランを確認しておくことで、不動産オーナーに安心してもらえるという。

 後志圏内に住む78歳の女性は息子宅に近い賃貸住宅を探していたが他社で全く相手にされず、武藤社長の下へ。物件探しに奔走し、複数の不動産オーナーと連絡を取り入居先を見つけた。「手間がかかるのは覚悟の上。高齢者の役に立ちたいのと大手にできない強みを持ちたい」と話す。

 前職で高齢者の見守りプロジェクトに関わっていた経験から、刊行物を発送して配達ドライバーが安否確認する仕組みを提供したいと考えている。

 「困っている高齢者にたくさん会い、北海道一のシニア層向け不動産会社になりたい」と将来像を描く。

(北海道建設新聞2019年12月24日付3面より)


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