X線照射し画像から解析 使用可否明確化で改修費低減
札幌施設管理(本社・札幌)は、オフィスビルや公共施設などに向けて「SPT配管診断」を提案している。配管にエックス線を照射し、得られた透過デジタル画像から配管内部のさびの状況や腐食の深さを高精度に数値化する。診断結果は保全計画書としてまとめ、健全度をSからDまで5段階で表すほか、工程表や概算工事費などを示す。東京など首都圏で多く採用され、最近は国会議事堂内の配管診断も担った。
SPT配管診断は配管内を解析して診断するサービス。配管の種類や特性、用途に応じてメインのエックス線や超音波、内視鏡、水質などの検査を実施し、結果から老朽度を総合的に数値・ランク化して評価する。
使える配管と使えない配管を明確化し、使えない配管だけを取り換えることで改修費を低減できると勧めている。診断結果を分かりやすくまとめた保全計画書の作成もオプションで手掛け、給水管や排水管など種類ごとに健全度を5段階で示す。推奨する更新時期を工程表に表し、年度ごとにかかる概算工事費を把握することもできる。
メインのエックス線デジタル画像解析を用いると、使えない配管は頂部に腐食が発生していたり、底部にスケールが堆積していることが見える。溶接部の溶け込み不足や、継ぎ手部分の差し込み不足など新設時の確認検査で用いることも可能だ。
費用は、建物の規模や設備の配置状況によって異なるが、おおむね1日当たり150万円から220万円ほど(15―25検体)が目安だという。調査・診断コストとしては決して安くないが、設備の長寿命化計画が立てられるため、ライフサイクルコストで勘案すると効果は大きい。
SPT配管診断の非破壊検査方法は、東大物性研究所の上床美也教授と共同研究し、特許も取得している。2019年度は東京都トライアル発注認定制度で、都が応援する中小企業の新商品やサービスの一つに認められた。最近は国会議事堂や星野リゾートトマムの配管診断を担うなど、道内外で実績を伸ばす。
北海道や東京だけでなく全国的な普及を目指し、日本建物配管調査診断協会を19年9月に立ち上げた。長崎や新潟、神戸の企業が会員だ。
19年6月に施行した公共工事の品質確保の促進に関する法律(品確法)の一部改正では、公共施設の維持管理施策の一つとして、診断の必要性が明記された。国や特殊法人、地方公共団体に対し、維持管理の担い手の中長期的な育成や確保に配慮しながら施設を適切に点検、診断、維持、修繕するよう求めている。
田中芳章社長は「庁舎やホールなど公共施設は災害時の拠点となるため、いざというときに給水できなかったり排水や汚水管が使えないと、大変なことになる。現状把握やアセットマネジメントの観点からもSPT配管診断に注目してほしい」と話している。
(北海道建設新聞2020年8月26日付3面より)