室内を満たす無形の魅力、広く外へ―。旭川市内の畳店9社で構成する大畳会は22日、和室の普及を願い畳表替えボランティアを実施した。井上靖記念館では職人が手作業で畳を張り替え、イ草の新鮮な香りと小気味いい音が部屋に広がり、畳の魅力を再発見する空間を創出した。
2003年から毎年続け、12年には2回実施し、今回で19回目。会長として活動を始めた中村孝太郎顧問は「市に仕事をもらっており、恩返しに始まった」と経緯を話す。
ことしは井上靖記念館と北星公民館で、畳32枚と床の間1畳半を張り替えた。記念館では、原田畳店の職人、大井雅俊さんが水際立った手さばきで畳床をあらわにしては畳表を新たにし、へりを縫う針と糸からは調子のいい音が反復し、仕上がった14畳の和室は香り、見栄え、手触りともに一新された。
「テンポで動き、自然と手と体が動く」と大井さんが話す職人技は継承者が減っている。佐藤英行会長は「昔はかっこいいと言われた所作」と振り返り、まずは和室と職人の魅力を伝え畳の普及につなげる考えだ。
生まれ変わった和室は、井上靖作品の読書会サークルが利用。記念館の佐藤史倫学芸員は「井上は書斎が畳敷きで、学生時代から柔道をたしなみ、畳には縁深い人物」と畳好きの一面を紹介し、その著作を読み継ぐ場として「気持ちよく使える環境に整った」と活動に敬意と感謝を示した。(旭川)
(北海道建設新聞2020年10月26日付8面より)