道内の人的建物被害想定 千島海溝沿い5.7万棟
内閣府は21日、日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震による被害想定を公表した。道内の主な被害のうち、冬季・夕方の建物全壊棟数は日本海溝モデルで11万9000棟、千島海溝モデルで5万7000棟と推計。インフラ関係を見ると、道路は日本海溝で2700カ所、千島海溝で1100カ所の被害を見込む。北海道以外の地域も含めた経済的被害は、日本海溝で約31兆円、千島海溝で約17兆円と試算している。
国では、2015年2月に日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震モデル検討会を設置し、最大クラスの震度分布・津波高などの推計結果を20年4月に公表。これに基づく被害想定と防災対策を検討するため、日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震対策検討ワーキンググループを立ち上げ、9回の会合を開いて協議を進めてきた。
被害想定は、建物・人的被害、生活への影響、インフラ・ライフライン被害などが顕著な地域の状況をまとめた被害の様相、主な項目の定量的な被害量、防災対策の効果を示している。広域的な防災対策の立案、応援規模の想定に活用するための基礎資料とする。
日本海溝モデルでは千葉県から北海道までの9道県で全壊・焼失棟数22万棟、死者数6000―19万9000人、負傷者数3300―2万2000人、経済的被害額(冬・夕方に発生し、津波の早期避難率が低いと条件設定)31兆3000億円に上る。一方、千島海溝モデルは全壊・焼失棟数8万1000―8万4000棟、死者数2万2000―10万人、負傷者数2600―1万人、経済的被害額16兆7000億円と試算した。
このうち道内の被害量を見ると、建物等被害は日本海溝、千島海溝それぞれに揺れや液状化といった要因別かつ発生時期別(夏・昼、冬・夕方、冬・深夜)の全壊棟数を算定。日本海溝は、いずれの発生時期も11万9000棟となった。要因は津波が11万8000棟と大半を占め、液状化は800棟、火災は冬・夕方のみ10棟を想定。千島海溝は夏・昼と冬・深夜が5万5000棟、冬・夕方は5万7000棟で、津波による被害が最も多い傾向は同じだった。
インフラ・ライフラインの被害箇所数もまとめており、道路は日本海溝が2700カ所、千島海溝が1100カ所、鉄道施設は日本海溝が在来線等800カ所、千島海溝が在来線等1200カ所。港湾のうち岸壁の係留施設は千島海溝のみ50カ所、その他係留施設も千島海溝のみ20カ所とした。防波堤(総延長98㌔)の被害延長は、日本海溝が約39㌔(国際拠点港湾約16㌔、重要港湾約14㌔、地方港湾約8㌔)、千島海溝が約36㌔(国際拠点港湾約9㌔、重要港湾約20㌔、地方港湾約7㌔)を見込む。
このほか、被災直後の上水道断水人口は日本海溝が1万5000人、千島海溝が30万2000人、被災直後の下水道支障人口は日本海溝が114万人、千島海溝が53万人と想定。冬・夕方における被災直後の停電軒数は、日本海溝が10万7000軒、千島海溝が5万4000軒となっている。
孤立の可能性がある集落については、日本海溝が農業集落15カ所、漁業集落47カ所、千島海溝が農業集落10カ所、漁業集落39カ所とした。
人的被害も発生時期ごとに分け、津波の早期避難率が高い・低いなどの条件設定をした上で試算。死者数の最大は日本海溝が13万7000人、千島海溝が8万5000人に上っている。
北海道以外も含めた積雪寒冷地の特徴的な被害量も示しており、流氷の漂着を考慮した場合の津波による全壊棟数は日本海溝が21万4000棟、千島海溝が8万2000棟。最大風速における地震火災焼失棟数は、日本海溝の夏・昼が20棟、冬・夕方が100棟、冬・深夜が30棟、千島海溝の夏・昼が2800棟、冬・夕方が8600棟、冬・深夜が3100棟だった。
(北海道建設新聞2021年12月22日付1面より)