適切な製品選択 労力軽減へ期待
国土交通省が2022年度の実装に向けて取り組む、建設現場パワーアシストスーツ(PAS)実証実験。北海道開発局で唯一選定された現場で記者が実際に着用し、効果を確かめてみた。動力によって効力はさまざま。用途に応じた製品の選び方次第で、作業者の労力軽減に大きくつながりそうだ。(帯広支社・阿部 みほ記者)
対象現場は、北土開発(本社・芽室)が帯広開建から受注した十勝川改修のうち屈足築堤ほか河岸保護(音更町)。樋門の建設に従事する型枠工が電動式、バネ式、ゴム式のPASを着用し、19―28日にかけて検証中。いずれのタイプも肩、腰、ももにベルトを巻いて身に付ける点は共通するが、本体の重量、体を支える仕組みに違いがある。
電動式は、JTEKT製の「ジェイパスランバスⅡ」。本体価格が65万7800円(税込み)で、3種類中、最も高価だ。背中にバッテリーなどを格納するケースがあり、5㌔ほどの重さがある。右腰に付いたリモコンで、体勢アシストの強さなどを調整できる。
多数のベルトで荷重が分散されているのか、肩への負荷はそれほど感じない。試しに、4本重ねた三角コーン(約15㌔)を持ち上げてみた。モーター音とともに、もも裏から体の動きに勢いが付く感覚。中腰になるとブレーキ機能が掛かる。
本体価格が最も安いのはゴム式で、3万800円(税込み)のスマートサポート製の「スマートスーツ」を採用。バネ式はダイヤ工業製の「ハコベルデ」を使い、本体価格は8万5800円(同)となる。ともに2種類のサイズ展開で、電動式と比べるとかなり軽量だ。
ゴム式は、膝を曲げた体勢を支える効果が高い感触。いわゆる「空気いす」の状態が苦にならない。バネ式は前屈の姿勢時に上体を支えるため、腰の負担が和らぐ。特に高身長の人への効果が高く感じる。ただ、この2種類に物を持ち上げる効果は薄く、腕力のある人に向いていそうだ。
各タイプとも、着ぶくれ感はほとんどない。数日使ってみた型枠工から「フルハーネスと一体になっているといい」と聞き、建設業ならではの視点も見えた。PASを上手に利用すれば、担い手不足や高齢化に悩む専門工事業にとって救いの手となるに違いない。