光陽小など改築で検証
札幌市都市局は、情報通信技術を活用し受発注者間で工事に関する情報を共有できる工事情報共有システム(ASP)について、2024年度の本格導入に向けた準備を進めている。22年度は光陽小、山の手小改築の主体(公告済み)で特記仕様書にASPの活用を指定。今後発注する付帯の電気、機械も対象に加えて検証し、業務の効率化を図る。
ASPは国土交通省が受発注者間のコミュニケーション円滑化や工事書類処理の迅速化、監督検査の効率化などを目的に積極活用している。受注者がサービスの提供業者と契約して利用する。
札幌市は建設局で導入済み。都市局では同意した受注者が個別に取り入れている。
丸彦渡辺建設は施工中の二十四軒小解体に活用。現場所長を務める札幌支店建築部工事グループの千葉崇史技師によると、現場写真の電子化によるペーパーレスをはじめ、施工計画書などの書類をクラウドで共有できるため、受発注者間で生じる押印や書類提出の負担軽減を図ることができたという。
千葉技師は「現場職員の休暇届や日報のワークフロー省略にも効果があった」と振り返る。とりわけ現場写真の電子化に関しては「30万円相当の印刷代を節減できた。紙にして3000枚、アカシアの木1本分に相当する」と説明。環境負荷の低減にもつながることを実証した。
田中組は、20―21年度で施工した二十四軒小改築ほか主体で採用した。建築部の工藤晴雄建築課長は日報、図面をまとめて共有できることや、市の電子メールサーバーでは容量制限で添付できなかった重いデータを扱えることなどのメリットを挙げる。
その一方で「学校の建築は分割発注となるため、(他工事の受注業者と)別途にやりとりが必要。建築のみでは効率化に限界がある」と指摘する。
加えて、各種書類のフォーマットが札幌市の書式に対応していないため、フリー書式で作成する必要があることも課題とした。
市都市局建築部建築工事課の笹森長武工事担当課長は、ASPの本格導入で対象範囲を拡大する意向を示した上で「サービスの提供業者にも札幌市仕様の書式を準備してもらえるよう働き掛けたい」と話す。
22年度の対象2工事は議会案件のため、3定市議会で承認を経た後、10月ごろの着工を想定。付帯設備は主体の着工に合わせて公告時期を調整する見通しだ。